「おい、イシェ、ちょっと待てよ!」
ラーンが息を切らしながら振り返ると、イシェは眉間にしわを寄せ、地図をじっと見つめていた。
「また何か見つけたのか?」
「いや、違うんだ。あの遺跡の入り口、よく見ると以前とは形が変わってるんだよ」
イシェは地図をラーンの顔前に突き出した。確かに、入り口付近に記されていた石造りの階段が、まるで崩落したかのように消えている。
「まさか…またヴォルダンが手を下したのか?」
ラーンは剣を握りしめながら言った。ヴォルダンは周辺の遺跡を次々と調査し、貴重な遺物を略取していた。彼らにとって最大の敵だった。
「可能性はある」
イシェは冷静に言った。「だが、今回は違う気もする。この遺跡は以前から危険とされていたものだ。何かが封印されているという噂もあった。もしかしたら…」
「もしかしたら?」
ラーンの視線がテルヘルに向いた。彼女は地図を広げながら、何かを考え込んでいるようだった。
「この遺跡の真下に、かつてヴォルダンに奪われた宝物が眠っている可能性がある」
テルヘルの言葉に、ラーンとイシェは息を呑んだ。
「もし本当なら…」
ラーンの瞳が輝いた。「あの宝こそが、俺たちをヴォルダンから解放する鍵になるのかもしれない!」
イシェは冷静さを保ちつつも、胸の高鳴りを抑えきれなかった。
「しかし、危険だ。あの遺跡には何かが封印されているという話だった…」
「大丈夫だ」
テルヘルは鋭い視線でラーンを見つめた。「私はそのリスクを負う覚悟がある」
そして彼女は立ち上がり、力強く言った。
「さあ、俺たちはこの遺跡に潜り、真実を暴いてみせよう!」