ビレーの朝はいつも静かで、空気が澄んでいた。ラーンが寝ぼけながら目を覚ますと、イシェがすでに朝食の準備をしていた。
「今日はどこ行くんだ?」
ラーンの問いかけに、イシェは地図を広げながら答えた。
「昨日テルヘルからもらった情報によると、東の丘陵地帯にある遺跡らしい。ヴォルダン軍が以前調査した痕跡があるみたいだ」
「ヴォルダンか…」ラーンは眉をひそめた。「あの辺は危険じゃないのか?」
「テルヘルが言うには、今は安全なようだ。遺跡はヴォルダンの支配下にあった頃に封じられたらしい。彼らは何かを見つけて、封印したという話だ」イシェは慎重に言葉を紡いだ。「だから、僕たちが最初にその遺跡を開けることになるかもしれない」
ラーンは興奮気味に立ち上がった。
「よし!よし!ついに大穴が見つかるかもな!」
イシェは小さくため息をついた。ラーンの楽観的な姿勢にはいつも呆れていたが、同時に彼の熱意に心を揺さぶられることもあった。
三人はビレーを出発した。太陽が燦々と輝く空の下、彼らは遺跡へと向かう。道中、イシェは時折不安そうに周囲を警戒する。ラーンはそんなイシェの手を軽く握りしめると、笑顔を見せた。
「大丈夫だ、イシェ。僕たちがいる限り安全だ」
イシェはラーンの言葉に少し安心した。だが、心の奥底では、安穏な日々が永遠に続くわけではないという予感を感じていた。