ラーンの粗雑な斧の音が石壁を削る音と混じり合い、埃っぽい空気を満たした遺跡の奥深くへとこだました。イシェは眉間に皺を寄せながら、足元を照らすランプの光を調整した。「本当にここなのか？こんな薄暗い場所で宝が眠っているなんて…」
「ほら、イシェ、疑うなよ！この場所の雰囲気だろ？古代文明の匂いがするぜ！」ラーンは目を輝かせ、壁に刻まれた謎の文字を指さす。しかし、イシェにはただのひび割れに見えた。
「古代文明の匂いなんてするわけがないわ。それに、この遺跡は既に何年も前に調査済みじゃないか？」
その時、後ろからテルヘルが冷たく声をかけた。「二人とも、無駄な時間を過ごしている。早く遺物を探せ。」彼女の鋭い視線はラーンの背中に刺さるように感じた。
ラーンはテルヘルの存在を忘れかけていた。彼女のために遺跡を探し回る日々は、いつしか単なる日銭稼ぎに変わっていた。「そうだな、イシェ、急いで探さないと、テルヘルに怒られちゃうぞ！」 彼は慌てて石壁を叩き始めた。
イシェはため息をつきながら、ラーンの行動をじっと見つめていた。彼女は彼とは異なり、遺跡探索の報酬である金銭を重視していた。テルヘルが提示した日当は魅力的だったが、その裏には危険な任務が潜んでいることも知っていた。
「見つけた！何かあるぞ！」ラーンの興奮した声が響き渡る。イシェは慌てて駆け寄ると、ラーンが壁の奥に隠された小さな部屋を発見したことに気づいた。中からは金貨や宝石が溢れ出ており、二人の目を輝かせた。
「やった！大穴だ！」ラーンは大喜びで部屋の中へ飛び込んだ。イシェも興奮を抑えきれずに、彼の後を続けた。しかし、テルヘルは冷静な表情のまま、部屋の奥にある石棺に視線を向けていた。
「この遺跡には、ただの宝物が眠っているのではない。」彼女は低く呟き、石棺に手を伸ばした。その瞬間、石棺から不気味な光が放たれ、部屋全体を赤く染めた。
イシェはラーンの顔色を見ようと振り返ったが、彼はすでに石棺の近くでうずくまっていた。彼の目は空虚に輝き、口からは奇妙な言葉を紡ぎ出していた。
「守銭奴…守銭奴…」