ラーンの大剣が石壁を砕き、埃が立ち込める中、イシェは細長い通路の先を照らした。
「ここだな」
テルヘルが呟くと、ラーンは不機嫌そうに顔をしかめた。
「また薄暗い遺跡か。宝の匂いもしないぞ」
イシェは彼を制止し、テルヘルの後を続けた。
「ここは古い文献にも記されている場所だ。強力な守護者があると伝えられている」
ラーンの眉間がさらに深く刻まれた。
「守護者？また面倒な奴か？」
テルヘルは振り返り、冷たく言った。
「守護者は必ずしも敵ではない。場合によっては協力者になることもある」
彼女の目はどこか遠くを見据えているようだった。
遺跡の奥深くに進むにつれて、空気は重くなり、不気味な静寂が支配した。壁には奇妙な文様が刻まれており、イシェは背筋が寒くなるのを感じた。
やがて、通路の先に巨大な扉が現れた。扉の上には、翼を広げた獣が描かれており、その目はまるで生きているかのように光っていた。
「ここが目的の場所だ」
テルヘルが扉に手をかけると、重々しい音が響き渡った。ゆっくりと扉が開き始め、その向こうから冷たい風が吹き出した。
扉の先には、広大な空間が広がっていた。中央には、巨大な水晶が浮かび上がり、その周りを何体もの石像が取り囲んでいた。石像はまるで生き物のように、静かに光を放ち、空気を震わせていた。
ラーンは剣を構え、警戒した。イシェも緊張して息を呑んだ。テルヘルはゆっくりと水晶に近づき、手を伸ばした。
「守護者よ、我々はここに来た目的を伝えに来た」
その時、水晶から強烈な光が放たれ、空間全体が白く満たされた。ラーンの視界が戻ると、水晶の周りには、石像が動き始めていた。
石像はゆっくりと水晶に向かって進み、その姿はまるで祈っているようだった。
「これは…」
イシェは言葉を失った。
テルヘルは静かに言った。
「守護者とは、この場所を守り続ける存在なのかもしれない」