「おいラーン、本当にここに入るのか？」イシェの声が震えていた。「あの石碑には警告が刻まれてるじゃないか。危険な場所だって明記されてるぞ。」
ラーンの背中は揺れた。「大丈夫だ、イシェ。ただの脅しだよ。それに、テルヘルが言ってたように、この遺跡には古代の魔導書があるらしいんだ。それを手に入れるためなら少しの危険は仕方ないだろう？」
イシェはため息をついた。ラーンはいつもこうだった。大穴を夢見て危険な遺跡に飛び込む。イシェは彼の幼馴染であり、彼の大胆さに引っ張られるように遺跡探検に同行しているが、冷静な判断力を持ち合わせており、ラーンの無謀さを心配し続けている。
「よし、準備はいいか？この遺跡はヴォルダン軍が以前調査したらしい。何か罠が残されているかもしれないぞ。」テルヘルが鋭い目で周囲を警戒しながら言った。彼女は黒曜石の短剣を握りしめ、その眼光は冷酷さと知性を併せ持っていた。
「学閥」と呼ばれる研究者集団に所属していた彼女は、ヴォルダンに全てを失った過去を持つ。復讐のためには手段を選ばず、遺跡探索も単なる金儲けではない。古代の知識や遺物からヴォルダンの弱みを探り出すためだった。
ラーンが石碑を押し開けると、暗闇に包まれた通路が現れた。「よし、行くぞ！」ラーンの声が響き渡る。イシェは彼らに続くように、懐中電灯の光を当てながら慎重に足を踏み入れた。
通路は湿気が多く、カビ臭い空気が漂っていた。壁には奇妙な文字が刻まれており、イシェは学問的な興味から写真に収めた。すると、壁から突如矢が飛んできた。「うっ！」ラーンが剣で矢を防いだ。「罠だ！」テルヘルが叫んだ。
続く暗闇の中で、彼らの冒険が始まった。