ラーンが遺跡の入り口で、いつものように剣を片手に構えると、イシェが眉間に皺を寄せて言った。「また無駄な抵抗か?」
「おいおい、念のためだ。わかんないだろ、この遺跡、何か仕掛けとかあるかもな!」とラーンはそう言いながら、石畳の上を蹴飛ばした。
その様子を見てテルヘルは苦笑した。「遺跡の規模を考えれば、そんな大掛かりな罠は無いだろう。時間だ。無駄に気を遣う必要はない」
イシェはテルヘルの言葉に頷いた。「ラーンにはいつも言ってるけど、計画性がないから…」
「おい!俺だって計画立ててるんだぞ!」と反論するラーンの耳元で、テルヘルは小さく呟いた。「計画なんてものは、状況に合わせて柔軟に対応するものではないか」
その言葉は、ラーンの耳には届かなかった。彼は遺跡の奥へと入っていく。イシェはため息をつきながら、ラーンに続く。テルヘルは二人の後をゆっくりと追った。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。壁には、かつての文明の痕跡が残されているが、ほとんど崩れ落ちている。ラーンの足音が石畳を響かせ、イシェは彼の後ろを静かに歩く。テルヘルは二人の後ろを少し離れて歩いていた。彼女は遺跡の壁に目を向け、何かを考え込んでいた。
すると、突然、ラーンが叫んだ。「何かいるぞ!」
彼の剣が光り、闇の中に飛び込んだ。イシェも素早く剣を抜いて、ラーンの横に並ぶ。テルヘルは冷静に状況を見極めていた。
「何だ?」とイシェが尋ねると、ラーンの声は興奮していた。「巨大な影だ!俺が見たことのないものだ!」
影が動き出した。それは巨大な獣の姿をしていた。鋭い牙と爪を持ち、赤い目を燃やすように光らせている。ラーンとイシェは剣を構えて獣に立ち向かう。テルヘルは静かに後ろから様子を見守っていた。
激しい戦いが始まった。ラーンの剣が獣の肉体を切り裂く音が響き渡る。イシェは素早い動きで獣の攻撃をかわしながら、隙を狙う。しかし、獣は強靭な体と鋭い爪で二人を圧倒している。
ラーンの攻撃が獣の体に深く食い込んだ時、獣は悲鳴を上げ、地面に倒れ込んだ。ラーンとイシェは息を切らしながら、獣をじっと見つめた。
「よし、これで…」ラーンの言葉が途絶えた。獣の体はゆっくりと光り始め、やがて消滅した。その場に何も残らなかった。
「あれは一体何だったんだ?」とイシェが尋ねた。
テルヘルは静かに言った。「遺跡を守護する存在かもしれない」
ラーンは呆然とした表情で言った。「まさか…こんなところに…」
イシェはテルヘルの言葉の意味を理解した。「つまり、あの獣は…」
テルヘルは頷き、「ヴォルダンとの戦いのために必要な情報が、この遺跡に眠っている可能性がある」と言った。
その言葉を聞いたラーンは、今まで以上に強い決意を感じた。彼はイシェとテルヘルに向かって言った。「よし、もっと深く潜ろう!あの獣を倒した俺たちは、必ず大穴を見つける!」