ビレーの喧騒を背に、ラーンはイシェに肩を叩き、陽気に言った。「今日はいい感じだな！テルヘルが言うには、今回は大物らしいぞ！」
イシェは眉間に皺を寄せた。「またそんな話か。テルヘルはいつもそう言うが、結局ただの破片ばかりだ」
「なあ、イシェ、お前って本当に信じないよな？いつか大穴を見つけるんだって！俺たちにはまだそのチャンスがあるって！」ラーンの目は輝き、イシェの視線を逸らした。「それに、今回はテルヘルがなんか怪しいこと言ってたぞ。ヴォルダンに関する何からしい…Detailsは知らんけど」
イシェはため息をついた。ラーンの楽観主義は、時にイシェを安心させることもあるが、多くの時はイシェを不安にさせていた。特に最近、テルヘルが口にするヴォルダン関連の話を聞くたびに、その不安は増していた。テルヘルはヴォルダンに何かしらの恨みを抱いていることは確かだった。しかし、その恨みが何なのか、そしてそれが遺跡探索にどのように関わっているのかは不明瞭だった。
「まあ、いいか。今回は少しだけ期待してみるか」イシェは小さく呟きながら、遺跡の入り口へと続く道を歩き始めた。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。ラーンは懐中電灯を振るいながら道案内をし、イシェは後ろから警戒を怠らなかった。テルヘルは先頭を歩いていたが、彼女の背中はいつも以上に硬く、何かを隠しているかのように見えた。
「ここだ」テルヘルが突然立ち止まり、壁に手を当てた。イシェとラーンも緊張した面持ちで彼女の後を追った。壁には複雑な模様が刻まれており、その中心には小さな穴が開いていた。
「これは…」イシェは目を丸くする。「ヴォルダンの記章…？」
テルヘルは頷きながら、鋭い視線でラーンを見据えた。「この遺跡にはヴォルダンが何かを隠している。そして、それを手に入れるには、お前たちの力を必要とする」