ラーンが興奮気味に遺跡の入り口を見つめていると、イシェは眉間にしわを寄せた。「またあの調子か？ ラーン、落ち着いて。今回はテルヘルさんの言う通り、慎重にやらないと。」
「大丈夫だ、イシェ。俺たちにはテルヘルさんがいるだろ？ あの富豪の娘さんなら、きっと何かいいものが見つかるはずだ！」ラーンはそう言って、テルヘルの方へ視線を向けると、彼女は薄く微笑んだ。その笑顔はどこか冷酷で、ラーンの心臓を少しだけ締め付けるものだった。
「では、皆さん準備はよろしいでしょうか。」テルヘルは優雅に歩き出し、遺跡の奥へと進んだ。「今日は特に慎重に進みましょう。ここはヴォルダンがかつて支配していた地域であり、危険な罠が残されている可能性があります。」
イシェはテルヘルの後を歩きながら、ラーンの様子を横目で確認した。彼はテルヘルに心を奪われているようだった。その媚びるような態度に、イシェは複雑な気持ちを抱いた。
遺跡内部は暗く湿り気があり、不気味な雰囲気に包まれていた。ラーンの足取りが軽快なのは、テルヘルの存在ゆえに違いないとイシェは悟った。彼はテルヘルを手に入れるために、どんな危険も恐れずに挑もうとしているのだろう。
しかし、イシェの直感は違った方向へ導いていた。遺跡の奥深くで、何か邪悪なエネルギーを感じ取ったのだ。それはテルヘルの目的とは無関係に、この遺跡に眠る何か恐ろしいものの目覚めの兆候だった。