ビレーの酒場に、テルヘルは現れた。ラーンとイシェはいつものようにテーブルを囲んで、安酒を傾けていた。
「何か用か?」ラーンの太い腕が、杯を力強く握る。
テルヘルは静かに席に着き、「次の遺跡について話をしたい」と切り出した。
「場所は、あのヴォルダン国境に近い廃墟だ」
イシェの眉がわずかに動いた。「危険すぎるだろう。なぜそこに?」
テルヘルは冷たい視線を向ける。「情報がある。ヴォルダンがかつて何かを隠したという記録を手に入れたのだ。それが遺跡に眠っていると確信している」
ラーンは目を輝かせた。「大穴か?よし、行くぞ!」
イシェはため息をつきながらも、「報酬は?」と尋ねた。
テルヘルはニヤリと笑う。「今回は特別だ。成功すれば、過去の仕事で支払わなかった分の報酬も加算する」
ラーンの顔色が変わった。テルヘルは彼を巧みに操っていることを知っていた。
「だが、一つだけ条件がある」テルヘルは言った。「あの遺跡には、ヴォルダンに仕える者たちが潜んでいる可能性もある。彼らを排除しなければならない」
ラーンは力強く頷いた。「任せてくれ!」
イシェはテルヘルの顔色を伺いながら、「大丈夫なのか?」と呟いた。
テルヘルは答えず、ただ微笑んだ。彼女の真意は、三人の間で媒酌する酒の泡のように、見え隠れしていた。