ラーンの大斧が埃を巻き上げ、遺跡の奥深くへと切り込んだ。イシェは彼の後ろを少し遅れて進み、足元を照らすランタンの光を調整しながら周囲を見回した。
「ここだ。」テルヘルが、崩れかけた石柱の脇にある小さな隙間を指差した。「古い記録によると、この遺跡には王家の墓があるはずだ。そこには…」彼女は言葉を濁すように続けた。「価値あるものがある。」
イシェはわずかに眉をひそめた。テルヘルの目的はいつも明確ではなかった。復讐のためとはいえ、なぜこんな危険な遺跡にこだわるのか。そして、なぜラーンたちを雇うのか。
「おい、イシェ!早くしろ!」ラーンの声が響き渡り、イシェの考えを遮った。彼はすでに隙間をくぐり抜け、闇の中に消えていく。テルヘルは小さく笑みを浮かべて、イシェの後を追うようにして隙間に入っていった。
狭い通路を進み、やがて広間に出た。壁には剥げた壁画が残っており、かつて栄華を誇った王国の姿を偲ばせた。中央には石棺が置かれており、その周りには金貨や宝石が散らばっていた。
「 jackpot! 」ラーンが歓声を上げ、石棺に飛びついた。イシェはため息をつきながら、石棺の周囲を警戒した。
「待て!」テルヘルが叫んだ。「この墓には罠があるはずだ。」
しかし、ラーンの耳には届かなかった。彼は興奮して石棺を開けようとした瞬間、床から鋭い棘が生えてきた。ラーンは素早く後ずさりしたが、左腕に深い傷を負ってしまった。
「くそ!」ラーンの怒号が響き渡った。イシェは慌てて彼を助け起こし、傷口を抑えた。テルヘルは冷静さを保ち、床に生えた棘を観察した。
「この棘には毒がある。」彼女は言った。「 antidote は遺跡の奥にあるはずだ。」
イシェはラーンの腕を抱き上げ、テルヘルの後を追った。彼らは遺跡の奥深くへと進んでいったが、その道中、イシェは一つの疑問を胸に抱いていた。
なぜ、テルヘルはこのような危険な場所にこだわるのか?そして、なぜラーンたちを雇うのか?
イシェは答えを予感していた。それは、単なる復讐心ではない何かがあると感じていた。もしかしたら、テルヘルの目的は、この遺跡の奥に眠る王家の墓に埋葬された真実を暴くことなのかもしれない。そして、その真実には、彼女の人生と深く関わった、ある秘密が隠されているのかもしれない。
イシェはラーンとテルヘルの後ろを歩きながら、その秘密を探ろうと決意した。もしかしたら、それは彼ら三人の運命を大きく変えることになるかもしれない。