「おいイシェ、この紋章見たことあるか？」ラーンが埃まみれの石板を指さした。イシェは眉間に皺を寄せながら、石板の模様を慎重に観察した。「…記憶が曖昧だが、古い文献で似たようなシンボルを見たことがあるかもしれない。ヴォルダンの古代遺跡に関するものだった気がする」彼女は答えた。
ラーンは「そうか！」と軽く拳を握りしめた。「ヴォルダンか！あの大国は遺跡の宝庫だって噂じゃな！」彼の目は興奮に輝いていたが、イシェは冷静に言葉を続けた。「でも、紋章だけでヴォルダンの遺跡だと断定できるわけではないわ。しかも、ヴォルダンは今やエンノル連合と緊張状態にある。無闇に関係する遺跡を掘り下げるのは危険だ」
「危険？そんなこと言わずに、行こうぜ！」ラーンの興奮を抑えきれず、彼は石板を手に持ち、すでに遺跡の奥へと足を踏み入れていた。イシェはため息をつきながら、彼の後を追った。テルヘルは遠くで冷酷な微笑みを浮かべていた。「興味深い…ヴォルダンとエンノル連合の間に挟まれた小さな遺跡。そこに眠るものは何なのか…」彼女の手には、薄暗い遺跡の地図が握られていた。