「おいラーン、今日の遺跡はなんか変だぞ」。イシェの言葉にラーンが顔をしかめた。「変って？」「あの…あの空気を覚えてないか？以前、あの大穴で感じたような…」イシェの視線はビレーの街を離れ、山脈の方向へと向けられていた。ラーンはイシェの言葉を無視して、遺跡の入り口に目をやっていた。「よし、入るか！」とラーンが叫ぶと、テルヘルは小さくため息をついた。「あの空気を…？」彼女は呟きながら、剣を握りしめた。
遺跡の中は暗く、湿った臭いが漂っていた。ラーンの足音は軽やかだが、イシェは慎重に足場を確認しながら進んだ。テルヘルは二人が進む様子を静かに見守っていた。「何かあったらすぐに知らせてくれ」とテルヘルが言った後、彼女は影のように後方を歩いた。
遺跡の中深くに進むにつれて、不気味な静寂が支配していた。ラーンはいつものように無謀にも奥へと進んでいくが、イシェは不安げに後ろを振り返った。「ここ…何か変だぞ…」イシェの言葉にラーンは苦笑いを浮かべた。「またビビってるのか？大丈夫だ、俺が守る」とラーンは言ったが、彼の声にも少しだけ不安が混ざっていた。
その時だった。壁から不気味な光が放たれ、床が激しく揺れた。ラーンの足元から崩れ落ち始めた地面にラーンは驚き、バランスを崩した。イシェは素早くラーンを引っ張り上げた。「気をつけろ！」とイシェが叫んだ。その時、影の中から何者かが現れた。それは巨大な怪物だった。
「これは…」テルヘルが呟く。その瞬間、怪物はラーンに襲いかかった。ラーンの剣が光り、怪物との激しい戦いが始まった。イシェは冷静に状況を見極め、テルヘルと共にラーンの後衛を固めた。「あの空気を…確かに…」イシェの心の中で姉の顔が浮かんだ。
激しい戦いの末、ついに怪物は倒れ、静寂が戻った。ラーンは息を切らしながら立ち上がり、イシェに振り返った。「おい、大丈夫か？」「ああ、大丈夫だ」とイシェは答えたが、彼女の表情はどこか落ち着いていなかった。テルヘルは剣を床に突き立て、「あの空気を…あの怪物…」と呟いた。
三人は遺跡から脱出し、ビレーに戻った。街の灯りが彼らの疲れた体に温かさを与えた。ラーンはイシェに肩を叩きながら「今日は危なかったな」と笑った。「ああ、本当に…」とイシェは答えたが、彼女の瞳には深い影が映っていた。