ラーンの大口を開けて笑う顔は、イシェにはいつもどこか滑稽に見えた。特に今日のように、遺跡から持ち帰ってきたのは錆びついた金属の破片と、使い古された布切れだけという時だ。
「ほら、イシェ!見てみろよ!これは古代文明の…」
ラーンの言葉が途切れた。イシェは、彼の目をじっと見つめた。「古代文明の…?」彼女の視線が、破片に落とされた瞬間、ラーンは言葉を失った。彼は、イシェの鋭い眼差しと冷静な判断を恐れていたのだ。
「妥当な見方をするなら、これはただのゴミだ」イシェは言った。「ラーン、いつまでも夢を語るだけでは何も得られないよ」
ラーンの肩が落ちた。「そうだな…」
その時、テルヘルが彼らの前に現れた。彼女の鋭い視線は、二人の様子を瞬時に読み取った。「どうだ?何か収穫があったか?」
ラーンの顔色が変わった。「えっと…実は…」
テルヘルは、イシェに視線を向けた。「イシェ、君の判断を聞かせてほしい」
イシェは深呼吸をした。この女性は冷酷だが、見誤ることは少ない。彼女の判断は、彼らにとって唯一の希望かもしれない。
「妥当な選択をするなら…」イシェは言った。「遺跡探索を続けるべきだ」
ラーンの顔に再び光が戻った。「そうか!イシェ、お前はいつも正しい!」
テルヘルは満足げに頷いた。「では、次の目標はどこにするか?」
イシェは地図を広げ、指を動かした。「この周辺には、まだ探査されていない遺跡がある。危険度が高いが…そこには、私たちが求めているものがあるかもしれない」
ラーンの目は輝いていた。「よし!行こう!」
イシェは、彼らに続く。希望と不安が入り混じる気持ちを抱きながら。妥当な選択なのかどうか、まだ分からない。しかし、彼女には、この三人で何かを成し遂げられるという確信があった。