ラーンの大声がビレーの朝静けさを掻き消した。「よし、今日はあの崩れかけた塔だ！地図によると奥深くまで遺跡が続いているらしいぞ！」イシェはため息をつきながら、いつものように準備を始めた。ラーンはいつも通り、計画性ゼロで危険な場所へ飛び込んでいく。
「またしても、ラーンの無謀な行動に巻き込まれることになるのか…」イシェは呟いた。しかし、彼にはラーンの持つ楽観的な明るさが魅力的に映る部分もあった。それに、彼と一緒に遺跡を探検する度に、歴史の謎に触れられる興奮も忘れてはいけない。
テルヘルは冷静な視線で二つの影を眺めていた。二人の奮闘ぶりを見ているうちに、彼女自身の復讐への執念が燃え上がるのを感じた。「ヴォルダン…いつか必ず…」彼女は呟きながら、鋭い眼光で遺跡へと続く道を睨んだ。
崩れかけた塔の入り口は狭く、石畳も一部崩落していた。ラーンは軽々と飛び乗り、イシェは慎重に足場を確かめながら進んだ。テルヘルは二人が進む様子を見守りながら、地図を広げ、遺跡の構造を分析していた。
奥深く進むにつれ、空気が冷たくなり、不気味な雰囲気が漂ってきた。壁には古代の文字が刻まれており、イシェは必死に解読を試みた。すると、突然、床の一部が崩れ落ち、ラーンが深い穴に落ちてしまった。「ラーン！」イシェとテルヘルの声が響き渡った。
ラーンの姿は見えなくなっていたが、かすかに彼の叫び声が聞こえた。イシェは恐怖を感じながらも、すぐにロープを投げ下ろした。テルヘルは冷静さを保ち、周囲の状況を注意深く見渡しながら、崩落の原因を探り始めた。
「何か…ここにいる…」ラーンの声が弱々しく響いてきた。イシェとテルヘルは力を合わせて彼を助け上げ、安全な場所に移動させた。ラーンの足には深い傷があり、意識も朦朧としていた。
「大丈夫か、ラーン！？」イシェが駆け寄ると、ラーンは苦しそうに笑った。「ああ…大丈夫だ…ただ少し休ませろ…」
テルヘルは冷静な表情のまま、傷を応急処置した。そして、崩落の原因を突き止め、遺跡の構造を分析し始めた。イシェはラーンの様子を見守りながら、テルヘルの行動に感心していた。
「彼女もまた、奮闘しているんだ…」イシェはそう思った。
この遺跡探検は、単なる財宝を求める冒険ではなく、彼らそれぞれの運命が交錯する場所になっていくのだった。