ラーンの大斧が石壁を砕き、埃が舞う中からイシェが慎重に遺物を取り出した。
「これならいい値段が付くかも」
イシェは小さな声で呟きながら、埃を払って遺物を布に包んだ。ラーンは満足げに頷き、剣を片手に周囲を見回した。
「よし、これで今日は終わりだ。テルヘルには喜んでもらえるぞ」
「待った方がいいんじゃないの? この遺跡、まだ奥が深そうじゃないか?」
イシェが言ったが、ラーンの顔は決意の色で固まっていた。
「今日はここで終わりだ。俺たちは約束の時間があるんだ」
二人は遺跡から戻り、待ち合わせ場所であるビレーの酒場に向かった。テルヘルは既に席に着いており、テーブルの上には金貨が並べられていた。
「よくやった。今回はいい成果だ」
テルヘルは冷めた目で遺物を確認し、金貨をラーンとイシェに渡した。ラーンの目は輝き、イシェも小さく頷いた。しかし、テルヘルの表情は硬く、何かを企んでいるようだった。
「次の目標はヴォルダン領の遺跡だ。そこには俺たちが奪還すべきものがある」
テルヘルは言葉を続けた。
「お前たちには危険すぎるだろう。引き下がるべきだ」
イシェが言うと、テルヘルは鋭い視線を向けて反論した。
「お前たちはもう後戻りできない。俺は奪取を諦めない。それに…」
テルヘルは少しだけ表情を和らげ、ラーンとイシェに言った。
「お前たちには俺が必要なのだ」