ラーンの豪快な笑いが、ビレーの薄暗い酒場に響き渡った。「おいイシェ、今日の遺跡探索も大成功だ！あの古代の壺は、一体いくらぐらいで売れると思ってんのか？」
イシェは眉間にしわを寄せながら、ラーンの熱気に冷めた視線を向け、「また無駄な期待を抱きすぎだよ。あれはただの欠けた壺に過ぎない。ましてや、ヴォルダンの兵士が頻繁に出没するあの遺跡に潜ったのは無謀だった。運が悪ければ、命を落とすぞ」
「大丈夫だ、イシェ。俺たちにはテルヘルがいるじゃないか。あの女は頼りになるわ。それに…」ラーンは目を輝かせ、「いつか俺たちは大穴を掘り当てて、ビレーから出て、もっと広い世界へ旅立つのさ！」
イシェはため息をついた。「そんな夢物語にいつまでも囚われていても仕方がない。現実を見ろよ、ラーン。俺たちの未来はビレーに縛られる。この街で安定した暮らしを送るためには…」
その時、酒場の扉が開き、テルヘルが入ってきた。黒曜石のような瞳に鋭い光を宿し、白い肌に黒いマントが映える。彼女は静かにテーブルに向かい、ラーンとイシェに言った。「次の仕事の話だ。ヴォルダンから持ち出してきた古代の地図がある。そこに記されている遺跡には、強力な魔物が封印されているという噂だ。危険だが、報酬は莫大だ」
ラーンの顔色が変わった。「魔物か…？」
テルヘルは小さく頷き、ラーンに目を向け、「報酬を手に入れるには、リスクを取らなければならない。君たちには、その勇気が必要だ」
イシェは不安げな表情を見せたが、ラーンの目は燃えるように輝いていた。「もちろん、行くぞ！大穴が見つかるかもしれないチャンスだ！」