「よし、今回はあの崩れた塔だ!地図によると奥に何かあるらしいぞ」ラーンが目を輝かせ、遺跡の入り口を見つめた。イシェは眉間にしわを寄せた。「また噂話か?ラーン、前回もそうだっただろう?」
「違うんだって!今回は確かな情報なんだ!」ラーンの言葉は自信満々だったが、イシェにはどこか不自然に聞こえた。最近ラーンは妙な熱心さを見せていて、いつもより遺跡探しの頻度が増しているのだ。
その時、テルヘルが静かに口を開いた。「何か隠されているものがあるかもしれない。あの塔はかつてヴォルダンの支配下にあった歴史を持つ。そこに何か手がかりがある可能性は十分にある」
ラーンの顔色が少し変わった。「そうか!ヴォルダンか…」彼の瞳に、今まで見えなかった何かが宿ったように見えた。イシェは不安を覚えたが、ラーンとテルヘルの様子から、何か重要なことが隠されているのは確かなようだった。
塔内部は崩れ落ちており、足元には石ころが散乱していた。三人は慎重に進んでいく。やがて、奥深くで壁に埋め込まれた小さな箱を発見した。イシェが慎重に埃を払うと、そこには複雑な模様が刻まれた蓋が見えた。
「これは…」テルヘルが目を細めた。「古代の言語だ。ヴォルダンと関係のある…契りの証かもしれない」
ラーンは興奮を抑えきれない様子で箱に触れた。「ついに見つかったのか…!これで俺たちの未来が変わる!」イシェはラーンの言葉に戸惑いを覚えた。彼がいつも口にする「大穴」とは何か違うものを感じ取ったのだ。
テルヘルはゆっくりと箱を開けようと手を伸ばした。「この契り、ヴォルダンを倒すために必要な鍵になるかもしれない…」彼女の瞳には、復讐への執念が燃えていた。