ビレーの酒場「荒くれ者」はいつも賑やかだった。ラーンがイシェと杯を傾けていたテーブルの隅には、いつも通りテルヘルが座っていた。彼女の顔は影を落としており、視線をグラスに固定していた。
「何かあったのか？」
ラーンの問いかけにテルヘルはゆっくりと顔を上げ、鋭い視線で彼らを睨んだ。
「ヴォルダンから情報が入った」
イシェが身を乗り出した。「何の情報だ？」
「遺跡の調査報告だ。最近、ヴォルダン軍が新たな遺跡発掘を開始したという。しかも、その場所は...」
テルヘルは言葉を濁し、しばらく沈黙を続けた。ラーンとイシェは息を呑んで彼女を見つめていた。
「ビレーに近い。」
二人は言葉を失った。ヴォルダンがビレーに近づいてくるということは、彼らにとって脅威以外の何物でもなかった。
「彼らは何かを探している」テルヘルは静かに言った。「そして、その鍵となるのが、我々が探す遺跡にあるのだ」
ラーンの顔色が変わった。「つまり、ヴォルダンもあの遺跡を狙っているのか？」
テルヘルは頷いた。「そうだとすれば、我々は彼らに先んじなければならない。ビレーを守るためにも...そして、私の復讐を果たすためにも」
イシェは不安そうに言った。「でも、ヴォルダン軍の力は...」
「わかっている」テルヘルの目は燃えるように輝いていた。「だから、我々は力を合わせる必要がある。ラーン、イシェ、共に戦う覚悟があるか？」
ラーンの拳がテーブルを叩きつけた。「当然だ！ビレーを、そしてお前のためにも、俺たちは戦う！」
イシェは少しためらいながらも、頷いた。
「わかった。一緒に戦おう」
三人は互いに視線を交わし、固く握り合った。彼らの前に広がる未来は不透明だったが、彼らは今、一つの目標に向かって歩み始めた。それは、ヴォルダンに奪われたものを取り戻すために、そしてビレーを守るために。
だが、彼らの知らないところで、ある古代の儀式が静かに進行していた。それは、遺跡の奥深くで行われ、かつての人々が奉納した力によって活性化されていたのだ。その力は、やがて世界を揺るがし、ラーンたちの運命をも左右するだろう。