ラーンが巨大な石の扉を勢いよく押し開けた。埃っぽい空気が立ち込め、奥には薄暗い通路が広がっていた。イシェは鼻をつまんで「またこんな場所か…」と呟いた。
「よし!今回は必ず何か見つかるぞ!」
ラーンの言葉に反して、イシェは心の中でため息をついた。最近、遺跡探索はいつも同じような結果に終わる。大穴と呼ばれる伝説の財宝を見つける夢を胸に抱いているラーンを止められないのだ。
テルヘルは静かに周囲を観察していた。「何かを感じた」と呟き、石畳の上にある小さな紋章に手を伸ばした。イシェが目を丸くする中、彼女は紋章をゆっくりと回転させると、床の一部が沈み込み、階段が現れた。
「これは…」
イシェは驚愕の声を上げた。この遺跡は今まで何度も訪れていたはずなのに、こんな場所はなかった。テルヘルは微笑みを浮かべながら言った。「この遺跡にはまだ多くの秘密がある」と。
階段を降りると、そこは広大な地下空間だった。天井から伸びる巨大な柱が神秘的な光を放ち、中央には祭壇のようなものが置かれていた。その上には、宝石で飾られた小さな箱があった。
「ついに…」ラーンは興奮の声を上げ、箱に手を伸ばそうとした。その時、イシェが彼の手を掴んだ。「待て!」
イシェは箱の上を見て言った。「何かおかしい…」。確かに、箱の周りには奇妙な模様が刻まれていた。テルヘルは真剣な表情で床に描かれた複雑な図形を眺めた。
「これは…奉るべき存在のための祭壇だ」
ラーンの顔色が変わった。「そんな…」
テルヘルはゆっくりと頷いた。「この遺跡は単なる宝の埋蔵所ではない。何かを奉るための場所だったのだ」
イシェは恐怖を感じ始めた。この遺跡の真の姿が明らかになるにつれて、彼女はこの場所からすぐに逃げ出したいと思った。しかし、ラーンは箱に手を伸ばすのを諦めなかった。
「大穴なら、こんなリスクもかろうじて…」
ラーンの目は狂気に満ちていた。イシェは絶望的な気持ちで彼を見つめた。彼らの前に広がるのは、希望ではなく、恐ろしい真実だけだった。