ビレーの朝はいつも、薄霧が山肌を染める静けさで始まった。ラーンはイシェを起こす前に、いつものように近くの酒場で一杯ひっかけていた。
「今日は何かいいものが見つかる気がするぜ！」
ラーンは、テーブルに置かれた粗末なパンを頬張って豪快に笑った。イシェはため息をつきながら、彼の隣に座る。
「またそんなこと言ってる。大穴なんて、ただの奇説じゃないか。」
イシェの言葉にラーンは少しだけ顔色が変わったが、すぐにいつもの笑顔を取り戻した。
「そうかもしれない。でも、もしかしたら…」
その瞬間、店の扉が開き、テルヘルが入ってきた。彼女はいつもより冷たい表情をしていた。
「今日は大急ぎだ。ヴォルダンから情報を手に入れた。遺跡の奥深くにある部屋には、強力な遺物があるらしい。だが、危険な罠が仕掛けられているという噂も…。」
ラーンの目は輝き、イシェは不安げにテルヘルを見つめた。
「罠？」
イシェの問いかけにテルヘルは頷いた。
「そう。そして、その罠を解くには…」
彼女は言葉を少し止めてから続けた。
「伝説の鍵が必要だと言われている。」
ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。伝説の鍵とは、ある奇説によると、かつてこの世界を滅亡に追い込んだと言われる古代文明の王が所持していたという謎のアイテムのことだった。
「そんなものは存在するわけないだろう…」
イシェは眉間に皺を寄せた。しかし、ラーンの目は、いつにも増して燃えていた。
「もし本当なら…」
彼は興奮した様子で言った。
「あの大穴を手に入れるチャンスかもしれない！」