ラーンが石畳の上で剣を磨いていると、イシェが眉間にしわを寄せながら近づいてきた。
「またあの依頼か?」
「ああ、テルヘルがまた遺跡の調査を頼んできたんだ。報酬はいつもの倍だぞ」
ラーンの顔には興奮の色が浮かんでいた。イシェはラーンの熱意に苦笑する。「そんな大金が必要な理由も分からん」と呟いた。ラーンはいつも通り、漠然とした「大穴」への夢を口にしたが、イシェは彼の瞳に映る欲望の奥底にある虚しさを捉えていた。
テルヘルはいつものように冷静沈着で、調査対象となる遺跡について詳細な情報を伝えた。今回は特に危険だと警告した言葉の裏には、何か特別な理由があるようにも感じられた。だが、イシェが疑問を口にしようとした時、ラーンが先に割り込んだ。
「よし、準備はいいか?大金稼ぎだ!」
イシェはため息をつきながら、背負う荷物に手をかけた。遺跡へ続く暗い森の入り口で、ラーンの後ろを歩くイシェは、テルヘルの影に秘められた何かを感じた。そして、自分の胸の奥底で、小さく「失点」という音が響いた。