ビレーの薄暗い酒場には、いつもより活気がなかった。ラーンの豪快な笑い声も、イシェの鋭い視線も、いつものように響き渡らない。テーブルに広げられた地図は、まるで希望を奪われたかのように、くすんだ色合いだった。
「本当に大穴が見つからないのか?」ラーンが呟いたその言葉は、彼自身の不安を映し出していた。イシェは沈黙を守り、空になった酒瓶をじっと見つめていた。テルヘルは静かに、しかし鋭い眼光で二人を見据えていた。「諦めるのはまだ早い」彼女の言葉は、氷のように冷たかった。「あの遺跡には秘密がある。失われた楽園の伝説が、真実である可能性もある」
ラーンの表情が少し明るくなった。「そうか、お前もそう思うのか?」イシェは小さくため息をついた。「でも、その伝説はただの作り話じゃないのか?」テルヘルは、テーブルに手を叩きつけた。「作り話だと決めつけるな。真実を見出すためには、リスクを冒す必要がある」彼女の目は燃えるような光を放っていた。「あの遺跡には、ヴォルダンが欲しがるものがある。それを手に入れるためには、我々が必要だ」
ラーンの瞳は、再び輝きを取り戻した。「よし、わかった。お前について行くぞ!」イシェも、テルヘルの熱意に押されるように、小さく頷いた。三人は立ち上がった。ビレーの薄暗い街を背に、失われた楽園へと続く道を歩み始めた。彼らの足音は、希望と不安が織りなす複雑な旋律だった。