ビレーの酒場はいつもより騒がしかった。執政官選挙の話題で持ちきりだ。ラーンはイシェに顔をしかめた。「またあの連中は、自分の都合のいいように話をすり替えているんだ」
イシェはため息をついた。「ああ、もういい加減にして欲しいわ。この街は遺跡のおかげで栄えているのに、一部の貴族たちが自分たちの利益のために税金を増やすなんて…」
ラーンの視線がテルヘルに向き、彼女は静かに酒を傾けていた。彼女の鋭い目はいつも通り、遠くを見つめていた。「ヴォルダンとの戦いを恐れている連中は多い。だから容易に戦争に賛成しないだろう」と冷たい声で言った。
ラーンはテルヘルの言葉を聞いて、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。確かに、エンノル連合の現状は不安定だった。貴族たちの失政とヴォルダンへの恐怖が、この国を蝕んでいたのだ。
「おい、二人とも黙って酒飲むんじゃないぞ」ラーンの背後から声が聞こえた。大柄な男がテーブルに近寄ってきた。「今日、遺跡の調査に行くんだろ？俺たちも一緒に行かせてくれ！」
イシェは眉をひそめた。「あの遺跡は危険だって言っただろう。それに、報酬は…」
「報酬は後で話そう！とにかく連れて行ってくれ！」男は熱く訴えた。彼の顔には、 desperation が漂っていた。
ラーンは男の目を見て、彼らが抱える不安と希望を感じた。この街の人々は、遺跡に希望を託していたのだ。だが、その希望は脆いものであり、失政によってさらに傷つけられているように見えた。
「わかった。連れて行く」ラーンの言葉に、男は安堵した表情を見せた。イシェはラーンを心配そうに見たが、何も言わずに頷いた。テルヘルは静かに微笑んだ。「面白い展開になりそうだわ」と呟いた。
彼らは遺跡へと向かった。ラーンの心には、不安と希望が入り混じっていた。この遺跡から何か見つけることができるのか？そして、この国の未来はどうなっていくのか？