「よし、今回はあの崩れかけの塔だ」ラーンが目を輝かせた。イシェは眉間に皺を寄せながら地図を広げた。「あの塔は危険だって聞いたことがあるわよ。 collapse risk が高いって…」。ラーンの肩を軽く叩くテルヘルの声に、イシェは言葉を飲み込んだ。「心配するな、イシェ。俺たちなら大丈夫だ」ラーンの豪快な笑いが響き渡った。
ビレーの街はずれ、崩れかけた石塔の前。彼らはいつも通り準備を始めた。ラーンが剣を手にすると、テルヘルは慎重に地図を広げ、イシェは小さなランタンを点炎させた。
「よし、入ろう」テルヘルが先頭を切って塔へと足を踏み入れた。
塔の中は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。崩れ落ちた石畳を進むにつれて、彼らの足音だけが響き渡る静寂に包まれた。
「ここら辺りから何かを感じないか?」テルヘルがささやく。「ヴォルダンとの戦いで奪われた遺物…きっとここに眠っているはずだ」
イシェは緊張した様子で周囲を見回した。「何か、感じるわ…」
突然、塔の奥の方から不気味な音が響き渡った。ラーンは剣を構え、イシェは背筋をゾッとさせた。「何の音だ?」
音は次第に大きくなり、轟音と共に石壁が崩れ落ちた。
そこに現れたのは、巨大な影。その姿は漆黒の鎧に身を包み、鋭い牙を剥いた獣のようなものだった。
「これは…!」テルヘルの顔色が変わった。「ヴォルダンが遺した守護者だ!」
ラーンは剣を高く掲げ、獣に向かって突進した。イシェは怯えることなく、小さな体で影に立ち向かった。
激しい戦いが始まった。ラーンの剣は獣の硬い鎧を貫き通すことは叶わず、イシェの矢は空を切った。テルヘルは冷静に状況を見極め、獣の弱点を探っていた。
「ここだ!」テルヘルが叫び、ラーンの背後から獣の足元に爆弾を投げつけた。爆発と共に獣は大きくよろめいた。その時、ラーンが渾身の力で剣を振り下ろした。
獣は咆哮を上げながら崩れ落ちた。
戦いが終わった後、三人は息を切らしながら互いに顔を見合わせた。
「あの…あの獣…」イシェは震える声で言った。「あれは何だったの?」
テルヘルは沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。「あの獣は…ヴォルダンの支配下にあり、天下を脅かす存在の一部なのです…」
ラーンの表情が曇った。「天下か…」。イシェも同様に考え込んだ。彼らにとって遺跡探索は単なる冒険ではなく、天下の運命に関わる戦いなのかもしれない。