ラーンの大雑把な swing で埃が舞い上がる。イシェは鼻をつまんで「また無駄な動きをしているわね」とため息をついた。彼らはビレーの郊外にある遺跡、崩れかけた石造りの塔に足を踏み入れてから3時間ほど経っていた。
「おい、イシェ!ここみて!」ラーンが興奮した声で叫んだ。石畳の下から金属光るものが覗いている。イシェは彼を睨みつけた。「また宝探しの気分か?あの箱の鍵を探しているんじゃないのか」
箱とは、テルヘルが持ち出した古い地図に記されていた遺物だった。地図によると、この遺跡には古代文明が残した強力な遺物が眠っているらしい。テルヘルはそれを手に入れるため、ラーンとイシェを雇ったのだ。だが、その遺物の在処を示す鍵となるのが、この遺跡に散らばる謎の箱だという。
「わかったわかった」ラーンが笑って石畳をめくり始めた。「でも、宝探しも悪くないだろう?もしかしたら大穴が見つかるかもよ!」
イシェはため息をつきながら、石の下から飛び出した小さな金貨を拾い上げた。
「また無駄な労力ね…」
その時、遠くで馬の嘶く声が聞こえた。
「あれ?あの音は…」ラーンが眉をひそめた。「まさか…?」
イシェも顔色が変わった。「ヴォルダンの兵士だ」
テルヘルは冷静に状況を判断した。「彼らはまだこの遺跡には入っていないようだ。我々は隠れるべきだ」
三人は慌てて塔の奥へ隠れ、息を潜めた。
「ヴォルダン軍がなぜここに?」イシェが不安そうに呟いた。
ラーンは拳を握りしめた。「まさか…あの大臣に関係があるんじゃないのか?」
テルヘルは表情を硬くした。「可能性は高い」
彼らはヴォルダンの兵士たちが去るのを待ち、再び遺跡の探索に戻った。しかし、彼らの心に影が落とされたままだった。この遺跡には単なる遺物だけでなく、何か大きな陰謀が隠されているように思えたのだ。