ビレーの朝はいつも霧に包まれていた。ラーンはイシェを起こす代わりに、地面に叩きつけるように剣を振るい始めた。「今日もいい天気だぞ!大穴が見つかる予感がする!」
イシェは眠い目をこすりながら言った。「またそんなこと言ってる。大穴なんてどこにもないよ。」それでも、ラーンの熱気に押されるように立ち上がり、準備を始めた。
テルヘルはすでに町の広場に立っていた。彼女はいつも通り、黒曜石のように輝く剣と冷たい目つきで、彼らを見下ろすかのようだった。「今日はあの遺跡だ。地図によると奥深くにある部屋には未確認の遺物があるらしい。危険だが、価値は高い。」
ラーンの目は輝き、「よし、行くぞ!」と叫び、イシェの腕を引っ張った。イシェはため息をついたが、テルヘルの後ろをついていった。
遺跡への道は険しく、大地に深く食い込んだ根っこが行く手を阻んでいた。彼らは剣で切り開きながら進み、やがて巨大な石造りの扉の前にたどり着いた。扉には奇妙な模様が刻まれており、まるで大地そのものを表現しているようだった。
テルヘルが鍵を差し込み、扉を開けると、内部は薄暗く、湿った空気が流れ込んでくるのが感じた。「気をつけろ。」とテルヘルは言った。ラーンが先頭に立ち、イシェが後をついて、慎重に遺跡内部へと足を踏み入れた。
石畳の通路を進むにつれ、壁には古代の人々が描いた絵画が浮かび上がってきた。大地と自然を崇拝する様子、そして、巨大な怪物と戦う様子が描かれていた。イシェは壁の絵画をじっと見つめながら、何かを感じ取ったような表情を見せた。
彼らは遺跡の中心部へとたどり着き、そこには広大な部屋が広がっていた。天井からは鍾乳石がぶら下がり、床には石板が敷き詰められていた。そして、部屋の奥には、巨大な水晶の球体が鎮座していた。球体は脈打つように光を放ち、その周囲には複雑な模様が刻まれていた。
「これが噂の遺物か。」テルヘルはそう呟き、近づこうとした瞬間、床が震え始めた。壁から巨大な影がゆっくりと現れ、大地を揺るがし始める。それは、古代の遺跡の絵画に描かれていた怪物だった。
ラーンは剣を抜いて立ち向かった。「来い!」と叫びながら。イシェは冷静さを保ち、テルヘルの指示に従って水晶球体から距離を取った。
激しい戦いが始まった。ラーンの剣は影を貫き通すことができず、イシェの機転で危機を免れるものの、影の力は圧倒的だった。大地が激しく揺れ、天井からは石が崩れ落ちてきた。
その時、イシェは水晶球体を見つめた。球体は脈打つように光り、まるで生きているかのようだった。「ラーン、あの球体が鍵だ!」と叫んだ。
ラーンの攻撃が影に届き始めるにつれて、球体の光が強くなり始めた。そしてついに、球体から強力な光が放たれ、影を包み込んだ。影は苦しみ声を上げながら消滅し、静寂が戻った。
イシェは震える手で水晶球体を触れた。「一体何が起こったんだ?」と呟いた。ラーンは疲れた様子で答えた。「わからない…でも、何か大きなものが始まったような気がする。」
テルヘルは冷静に言った。「この遺物はヴォルダンへの復讐に必要だ。」そして、3人は遺跡からゆっくりと引き揚げていった。大地は静かに、彼らの背後を見つめていた。