ラーンが巨大な石の扉を叩き割った時、埃が立ち込めて視界を遮った。イシェは咳払いしながら「また大層な音を立てて…」と呟いたが、ラーンの顔には興奮の色が浮かんでいた。
「よし、これで奥に繋がるはずだ!宝の山が見え隠れするぞ!」
いつも通り、ラーンの言葉は熱かった。だが、イシェの目は扉の向こうを疑いの目で見つめていた。この遺跡は、ビレー周辺では特に大きい規模のものだった。 それだけに危険も大きい。 過去の経験から、イシェは漠然とした不安を感じていた。
「待て、ラーン。あの扉は大きすぎるぞ。何か仕掛けがあるかもしれない」
イシェの言葉にラーンは少しだけ眉をひそめたが、すぐにいつもの笑顔を取り戻した。
「大丈夫だ、イシェ。俺たちが今まで見てきた遺跡なんて、ただの子供のおもちゃだ。それに、テルヘルもここにいるじゃないか。」
確かに、テルヘルは冷静な表情で周囲を観察していた。彼女は細長い剣を手に持ち、常に警戒を怠らなかった。ラーンの無謀さに呆れているようにも見えたが、その目は何かを見抜いているかのようだった。
「よし、じゃあ俺たちが先頭だ!」
ラーンはそう言うと、イシェの制止も聞かずに扉の隙間を潜り抜け始めた。イシェはため息をつきながら、テルヘルに視線を向けた。すると、テルヘルは小さく頷いた。それは、彼女がラーンの行動を止めようとはしないことを意味していた。
「仕方ないな…」
イシェは剣を握りしめ、ラーンの後を追うことに決めた。巨大な扉の向こう側には、一体どんな世界が広がっているのか。そして、そこに待ち受けているものとは…。