ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑い声を上げていた。「ほら見ろイシェ！今日は大穴だ！」テーブルの上には、テルヘルからもらったばかりの地図が広げられていた。イシェは眉間にしわを寄せながら地図を見つめていた。「ラーン、あの遺跡は危険だって聞いたことがあるぞ。ヴォルダンとの国境に近いし、何か不吉な噂もある」ラーンの笑顔は少し曇ったが、「そんなこと気にすんな！テルヘルが言うなら大丈夫だ！」と強がるように言った。テルヘルは静かに酒を傾けながら、二つの目を鋭く光らせていた。「遺跡には必ずリスクが伴う。だが、大きな報酬も待っている。その覚悟はあるか？」
翌朝、三人はビレーの門を出発した。日が昇るにつれて暑さが増し、道は乾燥して粉塵を巻き上げていた。ラーンの陽気な歌声だけが、静かな風景を破っていた。イシェは不安に駆られながら、地図を何度も確認していた。夕暮れ時、彼らは遺跡の入り口に着いた。朽ち果てた石造りの門が、まるで巨大な獣の口のように開いていた。「ここだ！」ラーンが興奮気味に叫んだ。しかし、イシェは不吉な予感を拭えなかった。
夜が更け、焚き火の光だけが薄暗い遺跡の中にわずかな明るさを灯していた。ラーンとイシェは疲れ果て、眠りに落ちかけていた。テルヘルだけ、目を覚まし続けていた。彼女は影のように動き、周囲を警戒していた。すると、遠くからかすかに音が聞こえてきた。「何かいる・・・」イシェがうそぶくように言った。その時、複数の影が遺跡の入り口から現れ始めた。剣を携えた武装集団だった。テルヘルはすぐに気づいた。ヴォルダン兵だ！
「夜襲だ！」テルヘルが叫びながら、剣を抜くと、ラーンとイシェも慌てて起き上がった。三人は慌ただしく武器を手に取り、敵に立ち向かった。激しい戦いが始まった。火花が散り、剣同士がぶつかり合う音が響き渡る中、三人は必死に抵抗した。しかし、ヴォルダン兵の数は圧倒的に多かった。ラーンは数人の兵士を倒したが、次第に力尽きていった。イシェも必死に戦っていたが、敵の攻撃を受け、倒れてしまった。テルヘルは一人、残りのヴォルダン兵に立ち向かっていた。彼女は冷静さを失わず、剣術と知略を駆使して戦い続けた。だが、数で負けていた。
その時、ラーンが立ち上がった。彼はイシェを守りながら、最後の力を振り絞ってヴォルダン兵に突進した。その隙にテルヘルは、最後の力を振り絞り、ヴォルダン兵のリーダーを討ち取った。「撤退だ！」リーダーを失ったヴォルダン兵たちは、慌てて遺跡から逃げていった。残された三人は、倒れ込んだまま息を切らしていた。
戦いは終わったが、彼らの前に立ちはだかる課題はまだ数多かった。なぜヴォルダン兵が遺跡に襲ってきたのか？テルヘルの復讐の道は、これからどのように進んでいくのか？そして、ラーンとイシェの未来はどうなるのか？三人は疲れた体を引きずりながら、新たな冒険へと足を踏み出した。