ビレーの朝焼けは、いつもより鮮やかだった。ラーンは寝ぼけながら、イシェの肩を叩いた。「おい、起きてよ、今日はテルヘルが待ってるんだろ?」
イシェはあくびしながら起き上がり、薄暗い部屋を見渡した。「ああ、そうだった。今日の遺跡は、あの崖の上のものでしょ? 聞いた話だと、かなり危険らしいけど…」
「そんなの気にすんな! 危険なほど宝も眠ってるって話じゃねえか!」ラーンは目を輝かせ、剣を手に取った。イシェはため息をつきながら、準備を整えた。
テルヘルは、いつも通りビレーの酒場に姿を見せていた。黒曜石の瞳が鋭く光り、薄暗い酒場を照らし出すように見えた。「今日こそ、お前たちに大穴を見せつけてやる」と彼女は自信満々に言った。ラーンの胸が高鳴るのを抑えられなかった。
崖の上の遺跡は、まさに絶景だった。夜明け前の薄暗がりの中、東の地平線からゆっくりと太陽が昇り始める。その光は、崖の上に建つ朽ちた石造りの建物に反射し、まるで黄金に輝いていた。ラーンは息を呑んだ。
「よし、入ろう」テルヘルが先頭に立ち、遺跡へと足を踏み入れた。イシェは不安げな表情を見せたが、ラーンの後ろについていくことにした。遺跡内部は、暗くて湿っていた。石畳の床には苔が生えていて、足元が滑りやすかった。
「気をつけろ」テルヘルが低い声で言った。「この遺跡には罠が仕掛けられている可能性がある」
彼らは慎重に進んでいく。壁には古代の文字が刻まれており、イシェは興味深そうにその内容を解読しようとした。しかし、テルヘルは彼を制止した。「今は集中する必要がある。宝探しは後だ」
ついに、遺跡の中央部へとたどり着いた。そこには、巨大な石棺が置かれていた。棺の上には、精巧に作られた黄金の装飾品が輝いていた。
「あれが…」ラーンは目を丸くした。「あの伝説の…」
「そうだ、あの伝説の宝だ」テルヘルは冷たく言った。「だが、この宝を手に入れるためには、危険な試練を乗り越えなければならない」
夜明けとともに、遺跡に光が差し込んだ。それは希望をもたらす光でもあり、同時に、彼らの運命を決める光でもあった。