ビレーの夕暮れは、山々に囲まれた街を穏やかな影で包んだ。ラーンとイシェは、テルヘルからの依頼で訪れた遺跡から戻ってきたばかりだった。日没が近づくにつれて、空には茜色のグラデーションが広がり始めた。
「今日は何も見つからなかったな」
ラーンの声が、夕凪のそよ風に紛れて消えていく。イシェは小さくため息をついた。遺跡探索はいつも危険を伴うが、最近特に成果が上がらない。テルヘルの依頼は高額だが、その分リスクも高い。
「あの日当で、ビレーの酒場を飲み干してもいいんだろ？」
ラーンはそう言ってにやりと笑った。イシェは彼の楽観的な態度に、 exasperation を覚える一方で、どこか安心感も覚えていた。
テルヘルは、遺跡から持ち帰った石板を真剣な表情で見つめていた。
「この記号…ヴォルダンに関するものかもしれない」
彼女は呟いた。ラーンの無邪気な笑顔とは対照的に、彼女の目は冷酷な光を放っていた。復讐の炎は、夕暮れの茜色に燃えていた。
イシェはテルヘルの表情を見て、胸が締め付けられるような感覚を覚えた。彼らには、単なる遺跡探索以上の何かが絡み合っていることを、彼女は漠然と感じていた。
ビレーの街灯が一つずつ灯り始め、夜が深まるにつれて、夕凪は静かに消えていった。三人はそれぞれの思いを抱きながら、明日の遺跡探索へと向かう準備を始めた。