ラーンが、いつものように大げさな声で遺跡の入り口に立ち向かう。イシェは彼を呆れたような目で見て、「本当に大穴が見つかると思うのかい?」と呟いた。ラーンの豪快な笑顔は一瞬曇ったが、すぐに元に戻り、「お前には分からん!いつか必ず、俺たちの運命を変える大穴を見つける!」とばかりに遺跡の中へ飛び込んだ。
イシェはため息をつきながら、テルヘルを横目で見た。彼女は冷静に周囲を観察し、地図を広げて何かを呟いている。「あの崩れた通路は以前とは違う…何か変化があったようだ」と静かに言った。ラーンの無茶な行動にいつもハラハラするイシェだが、テルヘルの存在は安心感を与えていた。彼女の鋭い洞察力と戦略性があれば、きっと何らかの手がかりを見つけるだろう。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気で満たされていた。ラーンが先頭を切って進んでいくが、足元には落とし穴や崩れた石が待ち受けている。イシェは慎重に後を追い、テルヘルは地図を見ながら道案内をする。彼女の冷静な指示に従い、彼らは深い坑道の中へと進んでいった。
突然、壁から奇妙な光が放たれ、空気が重くなった。ラーンは剣を抜いて警戒するが、イシェは「これは…」と呟き、テルヘルの顔色が変わった。「何か悪いことが起きる…変転の兆候だ」と彼女は言った。
その時、地面が激しく揺れ始めた。天井から石が崩れ落ち、ラーンはイシェを庇いながら転がった。埃が立ち込め、視界は真っ白になった。
「イシェ!大丈夫か?」ラーンの声がかすかに聞こえた。イシェは目をこすり、ゆっくりと立ち上がった。彼女は自分の体を確かめると、幸いなことに大きな怪我はなかった。だが、周りを見回すと、ラーンの姿が見えないことに気がついた。
「ラーン!」イシェが声を張り上げたが返事はない。恐怖がイシェの心を支配した。テルヘルも顔色を失い、地図を握りしめた。「落ち着け、イシェ。彼が生きているはずだ。まず安全な場所を見つけよう」と彼女は言った。
二人は崩れた通路を慎重に進む。イシェは不安で胸が締め付けられるような感覚を覚える。ラーンの無茶な行動でいつもハラハラするが、彼がいなければ自分の世界はつまらない。
その時、かすかな声で「イシェ…」と聞こえた。イシェは声のする方へ駆け寄り、崩れた石の下からラーンを見つけ出した。彼は意識を失っていたが、息はしているようだった。
「ラーン!」イシェは安堵の涙を流しながら彼を抱きしめた。テルヘルも駆け寄ってきた。「大丈夫だ。生きている」と彼女は言った。イシェはラーンの顔を見つめながら、彼の無茶な行動に腹を立てながらも、同時に深い愛情を感じた。彼はいつも彼女を不安にさせてしまうが、その一方で彼女の人生を豊かに彩る存在でもあった。
彼らはラーンを安全な場所に運び、彼の意識を取り戻すまで見守った。そして、変転の兆候を示す遺跡から脱出しようと決意した。この経験は彼らにとって大きな試練となり、彼らの関係にも変化をもたらすことだろう。