ラーンの粗雑な斧の一撃が埃を巻き上げ、遺跡の奥深くへと響いた。イシェは眉間にしわを寄せながら、崩れかけた石柱の隙間から覗き込んだ。
「本当にここなのか? いつもこんな曖昧な地図しか渡されない…」
「大丈夫だ、イシェ。あのテルヘルは嘘をつかない」ラーンは豪快に笑った。「それにほら、この壁画を見ろ! きっと何か大した宝が眠ってるはずだ」
壁画には、奇妙な獣の姿が描かれていた。その目は宝石のように輝き、鱗は複雑な模様で覆われている。イシェは背筋がゾッとするような感覚に襲われた。あの獣、どこかで見たことがあるような…
「ラーン、ちょっと待った方がいいんじゃないか?」
だがラーンの耳には届かなかった。彼は興奮気味に壁画を指さし、斧を振り下ろした。石壁に深い傷が刻まれ、その奥から不気味な光が漏れた。
その時、イシェの視界が歪んだ。壁画に描かれた獣が動き出し、壁を破って飛び出してくるかのように感じた。そして、その獣の姿はラーンの影に重なり合った。
ラーンが叫んだ。「イシェ! あれは…!」
彼の言葉は途絶え、代わりに獣の咆哮が響き渡った。ラーンの姿は獣の姿と融合し、巨大な怪物へと変貌していった。イシェは恐怖で言葉を失い、立ち尽くしたままだった。