ビレーの喧騒が遠のき、遺跡の入り口に差し掛かった時、ラーンの視線はテルヘルに向いた。「今日はいい感じだな！何かワクワクするものが掘り出せそうだぞ！」
イシェが眉をひそめた。「いつもそんなこと言ってるじゃない。今回は本当に慎重に進もうよ。」
テルヘルは二つの顔を交互に見つめ、「遺跡には常に危険が伴うことを忘れないでください。特に今回は…」彼女は言葉を濁し、地図を広げた。「ここは過去に起きた変異を示す記録がある場所だ。遺物の影響か何かの理由で、空間が不安定になっている可能性が高い。」
ラーンの顔色が曇った。「変異って…？」
イシェはテルヘルの言葉の意味を理解したように小さくため息をついた。「つまり、遺跡の中はいつもと違う危険があるってことだな…」
「大丈夫だ。俺たちがしっかり見張ればなんとかなるさ！」ラーンはそう言って胸を叩いたが、彼のいつもの自信に欠ける声には、わずかな不安が混じっていた。
遺跡内部は薄暗く、不気味な静けさに包まれていた。足元の石畳には奇妙な模様が刻まれ、壁には腐食したような謎の文字が描かれていた。ラーンは剣を握りしめ、イシェは細心の注意を払って周囲を観察していた。テルヘルは先頭を歩き、時折地図を確認しながら進路を選んでいた。
すると、突然、石畳から異様な光が放たれ、空気が激しく震えた。三人は反射的に身をかわし、目を凝らした。その光は一瞬で消え去った後も、空間が歪んだままだった。
「これは…！」イシェは声を失い、ラーンは剣を構えながら周囲を見回した。「一体何が起こったんだ？」
テルヘルは冷静に状況を判断し、「空間の変異だ。今は慎重に進もう。」と告げた。
彼らはゆっくりと進み続けると、やがてその空間の変異が彼らの姿を変えていくことに気づいた。ラーンの体の一部が金属のように硬化し始め、イシェの目は金色に輝き始めた。テルヘルは自身の変化を悟り、自分の意思とは関係なく、何かが彼らを支配しようとしていると認識した。
「これは…俺たちを…」ラーンは言葉につまり、イシェも恐怖の色を浮かべていた。
テルヘルは深く息を吸い、毅然とした態度を取り戻した。「変異は避けられない。だが、我々はそれをコントロールできるはずだ。」彼女の目は鋭く光り、三人は力を合わせて変異の波に立ち向かう決意をした。彼らの運命は、この変容の先に待ち受けている未知なる世界と深く結びついていた。