ラーンが巨大な石の扉をこじ開けると、埃っぽい空気が充満した部屋が現れた。イシェが持ってきたランプの火が揺らめき、壁一面に描かれた奇妙な模様を浮かび上がらせる。
「うわっ、これは…！」
ラーンの声は興奮気味だ。イシェは慎重に床を踏みしめる。石畳には複雑な図形が刻まれており、まるで罠のように見える。
「落ち着いて、ラーン。ここは一体…」
イシェの言葉を遮るように、扉の向こうからテルヘルが声を張り上げた。「何か見つけたぞ！急いで！」
テルヘルはすでに奥へ進んでおり、二人も仕方なく後を追う。部屋の奥には祭壇があり、その上に光る石が置かれていた。
「これは…！」
ラーンの目を見開く。イシェも息をのんだ。それは、かつてヴォルダンに奪われたという伝説の宝石だった。テルヘルの目的はこれだったのだ。
「よし、これで—"
テルヘルが宝石に触れようとすると、床から毒ガスが噴き出した。イシェは素早くラーンを引っ張り、なんとか逃げ延びる。だが、テルヘルは遅かった。彼女は苦しみながら倒れ、宝石は彼女の指の間から滑り落ちていく。
「テルヘル！」
ラーンが駆け寄ろうとするが、イシェが彼の手を掴んだ。「ダメだ！罠だ。あの宝石は偽物だった」
イシェは冷静に状況を見極めていた。宝石の輝きは本物に見えたが、その下に刻印された紋章がヴォルダンのものとは異なっていたのだ。これは、ヴォルダンを欺くために作られた偽物で、この遺跡全体が elaborate な罠だったのだ。
「あの女は…！」
ラーンは怒りで震えている。テルヘルは彼らをだまし、自分の目的のために利用していた。イシェはラーンの肩に手を置いた。「落ち着いて。ここはもう危険だ。逃げよう」
二人は立ち去る決心をした。しかし、その時、後ろから声が聞こえた。
「待て…」
振り返ると、そこに立っていたのはテルヘルだった。彼女は宝石を手に握りしめ、血まみれの顔で笑みを浮かべていた。
「この宝石は、私だけのものだ」
彼女の目は狂気に満ちていた。イシェはラーンに言った。「逃げるんだ！あの女はもう…」
ラーンの言葉が終わらないうちに、テルヘルが投げた宝石がイシェの額を直撃した。彼女はよろめき、意識を失った。
ラーンは絶叫した。
「イシェ！」
しかし、テルヘルはすでに姿を消していた。ラーンの目の前で、偽りの宝石と裏切りの現実が残されていた。