「おい、イシェ！あの石碑、何か刻まれてないか？」
ラーンが大きな石碑を指差した。ビレーから少し離れた遺跡の入り口付近だ。イシェは眉間に皺を寄せながら、石碑に近づいた。
「何やら文字みたいだけど、読めないわ」
イシェは石碑を撫でながら呟いた。「古い言語かもね。ラーン、お前は本当に大穴が見つかると思うのか？」
「もちろんだ！あの遺跡の奥には必ず何かあるはずだ！」
ラーンの声は弾んでいたが、イシェにはどこか不安を感じた。最近、ラーンの「大穴」への執着が強くなっているように思えるのだ。
その時、背後から冷たい声が響いた。
「見つけたようですよ。それこそが、我々が求めるもの。古代の鍵と呼ばれる石碑です」
テルヘルが近づいてきた。彼女の手には古びた地図が広げられており、その上に石碑の位置が記されている。
「鍵？」ラーンが眉をひそめた。「何に使うんだ？」
テルヘルは不気味な笑みを浮かべた。「それはまだ教えられない。お前たちにやるべきことをやってもらえば、必ずわかる時が来る」
イシェはテルヘルの言葉に警戒心を抱いた。彼女には何か秘密があるように思えた。そして、その秘密が自分たちを危険に巻き込むのではないかと恐れた。
「よし、準備だ！鍵を探し出すぞ！」
ラーンは意気揚々と遺跡へと足を踏み入れた。イシェはため息をつきながら、テルヘルの後を追った。
「大穴」と「鍵」。それらは一体何なのか。イシェの心には不安だけが募っていく。