ラーンの斧が岩盤を叩き、石塵が舞い上がる。イシェは咳払いしながら「またあの調子? 今回は慎重にやろうって言ったじゃないの。」と眉間にしわを寄せた。ラーンはニヤリと笑って「大丈夫だ、イシェ。今日は俺の勘がビンゴだ! きっと大穴が見つかるぞ!」と自信満々に言った。だが、イシェは彼の背中に影が落とすように、テルヘルが冷ややかに見つめていることに気付いていた。
「この遺跡には何かあるはずだ。」テルヘルは低く呟きながら、石畳の上をゆっくりと歩いていった。「ヴォルダンとの戦いの鍵となるものが見つかるかもしれない。」その声は、まるで石を削るように鋭く、イシェの耳に刺さった。「見つけたものは全て俺たちに渡すことになる。忘れるな。」
ラーンはテルヘルの言葉に耳を傾けなかったが、イシェは彼女の視線を感じて背筋が寒くなった。あの声帯が吐く言葉にはいつも冷酷な真実が隠されているような気がした。そして、それは彼らを危険な場所へと導く予感だった。