ビレーの朝の光が、埃っぽい遺跡の入り口に差し込んだ。ラーンはいつものように大口を開けて笑った。「よし、今日は必ず何か見つかるぞ!」
イシェはため息をつきながら、剣を構えた。「いつもそう言うけど…」
「今回は違う! 今日の感覚は違うんだ」ラーンの目は輝いていた。イシェは彼のその熱意に少しだけ心を動かされた。
テルヘルは背後から冷めた声で言った。「無駄な時間を過ごしているようだな。早く遺物を見つけ、この遺跡を出るべきだ」
ラーンは気にせず、入り口へと足を踏み入れた。イシェとテルヘルも続いて遺跡の中へ進んだ。
遺跡の内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。壁には奇妙な文様が刻まれており、時折不気味に光る石が埋め込まれていた。ラーンの足音だけが響き渡り、緊張感が高まっていった。
「ここだな」
テルヘルが壁の一部分に手を当てると、その部分がゆっくりと回転し始めた。奥へと続く通路が開かれたのだ。
「おっと、これはなかなかいい感じだぞ!」ラーンは興奮気味に言った。イシェは眉間に皺を寄せながら、周囲を警戒した。
通路を進んでいくと、空間に広がる巨大な部屋に出た。中央には、脈打つように光り輝く球体が浮かんでいた。その球体は複雑な模様で覆われており、まるで生きているかのような印象を与えた。
「これは…!」テルヘルは目を丸くした。「伝説の増幅球体だ…」
ラーンの顔も驚きの色を帯びた。「増幅球体って…一体どんな効果があるんだ?」
テルヘルは真剣な表情で言った。「この球体は、あらゆる能力を増幅させる力を持つと言われる。魔法、武術、知性…ありとあらゆるものを超える力を引き出すことができる」
ラーンの目は輝きを帯び、イシェの顔にも少しだけ興味の色が浮かんだ。
「これは大きな発見だ…」テルヘルは言った。「この球体を手に入れることができれば、ヴォルダンへの復讐も夢ではない…」
その時、部屋の奥から、不気味な音が聞こえてきた。影が壁に揺らめき、何者かが近づいてくる気配を感じた。
イシェは剣を抜き、ラーンとテルヘルも警戒を強めた。
「何だ…? 」
ラーンの声が震える。影が部屋に姿を現した時、三人は息を呑んだ。そこには、巨大な怪物が立っていたのだ。その体は黒曜石のように硬く、鋭い牙と爪が光っていた。
「増幅球体…俺のものだ!」怪物は唸り声を上げ、襲いかかってきた。