ビレーの朝焼けはいつもより赤く染まっていた。ラーンがいつものようにイシェを寝坊させようとすると、イシェはすでに起きていた。テーブルの上には、テルヘルから届いた手紙が置かれていた。
「ヴォルダンとの国境付近で、新たな遺跡が発見されたらしい」
イシェは手紙をラーンの前に押し出した。「今回は大規模な遺跡らしい。テルヘルが協力を要請してきた」
ラーンは興奮気味に声を上げた。「ついに来たか!あの大穴が見つかるのは今日かもしれない!」
イシェは眉をひそめた。「大穴なんて、ただの夢話じゃないか。それに、ヴォルダンとの国境って危険すぎるだろう」
「大丈夫だ。テルヘルが言うなら大丈夫さ。それに、報酬も良さそうだしな!」
ラーンの目は輝いていた。イシェはため息をついた。ラーンの熱意にはいつもついていくしかなかった。
ビレーを出て、数日かけてヴォルダンとの国境付近へと向かった。遺跡の場所は、険しい山岳地帯にそびえ立つ巨大な石柱だった。石柱には複雑な模様が刻まれており、その中心には漆黒の穴が開いていた。
テルヘルは石柱の前に立って、ラーンたちに言った。「ここはかつてヴォルダンとエンノル連合の国境であった場所だ。この遺跡は、両国を分断する境界線として築かれたものと考えられる」
イシェは不安そうに言った。「ここに遺跡があるということは、ヴォルダンもこの遺跡を狙っている可能性が高いんじゃないのか?」
「そうだ」テルヘルは冷たく答えた。「ヴォルダンは、この遺跡の力でエンノル連合を征服しようと企んでいる。我々はそれを阻止しなければならない」
ラーンは剣を抜いた。「わかった!俺たちがヴォルダンをぶっ飛ばしてやる!」
イシェはラーンの肩に手を置くと、テルヘルに向かって言った。「私たちはあくまで遺跡を探索しに来ただけだ。ヴォルダンとの戦いに巻き込まれるつもりはない」
テルヘルは深く頷いた。「わかっている。だが、もしヴォルダンが遺跡を手に入れようとした場合、我々は力を合わせて彼らを阻止する必要があるだろう」
3人は石柱の中へ足を踏み入れた。そこは、まるで別の世界のように静寂に包まれていた。壁には、古代の人々が描いたという壁画が広がり、その奥には漆黒の闇が広がっていた。
ラーンは興奮気味に言った。「ここだ!大穴があるはずだ!」
イシェは不安そうに言った。「ここは何か変だ。何か見守られているような気がする」
その時、石柱の奥から、不気味な声が響き渡った。それは、まるで人間の言葉を話す獣の声のようだった。
ラーンは剣を構え、「何だ!?出てこい!」と叫んだ。
影の中から、巨大な獣が姿を現した。その目は赤く燃えており、鋭い牙がむき出しになっていた。
イシェは恐怖で声を失った。ラーンは獣に向かって突進したが、獣の爪にはね飛ばされ、壁に激突した。
テルヘルは冷静に剣を抜き、「ここはヴォルダンとエンノル連合の国境だった場所だ。この遺跡は、両国を分断する境界線として築かれたものなのだ」と言った。
「境界線?何を言っているんだ?」ラーンが呻きながら言った。
テルヘルは言った。「この遺跡は、ヴォルダンとエンノル連合の境界線上にある。そして、この獣は、その境界を守る存在なのだ。」