ビレーの酒場「老鷹」はいつも以上に騒がしかった。 dinding 木製のテーブルの上には、日頃の疲れを癒やすように、粗い酒と乾いた肉が並べられていた。ラーンはイシェの肩を軽く叩き、大声で叫んだ。「イシェ、見てみろ!今日の報奨金、いい額だろう?これでまた一週間は酒と肉だ!」
イシェはラーンの熱意に苦笑しながら、テーブルに置かれた小袋を見つめた。確かに今回の依頼は高額だった。だが、その金額が彼らをどれほど幸せにするのか、イシェには分からなかった。ビレーの住民にとって「遺跡探索」とは、危険を伴う日雇い労働に過ぎないのだ。
「でも、ラーン。あの遺跡の奥深くで何が眠っているか分かるはずがないだろう?一体何を探しているんだ?」イシェは呟くと、ラーンの目をじっと見つめた。「あのテルヘルは、一体何のためにそんな危険な場所に私達を連れて行くんだ?」
ラーンの表情は一瞬曇ったが、すぐにいつもの陽気な笑顔を取り戻した。「そうだな、テルヘルは謎が多いな。でも、あの目は嘘をつかない。何か大きなものを見つけたんだ。きっと、俺たちはそれを手に入れることができる!」
イシェはラーンの言葉に深く頷いた。しかし、彼の心の中では不安な影が忍び寄っていた。ビレーの住民にとって、遺跡探索は単なる生活手段なのだ。だが、テルヘルにとっては違う。彼女は何かを隠している。そして、その秘密は彼らを危険な場所に引きずり込むかもしれない。
翌日、ビレーの広場には人だかりが集まっていた。今日の「報道」では、ヴォルダンとの国境紛争が激化しているというニュースが流れていた。イシェはラーンの肩に手を置き、静かに言った。「ラーン、もし何かあったら、逃げよう。」
ラーンの表情が硬くなった。「分かっている。でも、俺たちは約束しただろう?あの大穴を見つけ出すまで、諦めないで。」
二人は互いに頷き合った。そして、テルヘルと共に遺跡へと向かった。彼らの背中には、ビレーの人々の不安な視線が注がれていた。