ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑っていた。「また大穴か！イシェ、お前も見たろ！あの遺跡の奥にはきっと、黄金で埋め尽くされた部屋があるんだ！」
イシェは眉間にしわを寄せながら、彼の言葉を遮った。「ラーン、そんなもの、二度とないって。あの遺跡はすでに何年も探検されてるんだぞ。もう何も残ってないはずだ」
ラーンの笑顔は消えなかった。「でも、もしかしたらね！あの奥の部屋には、誰も気づいてない仕掛けがあるんじゃないか？俺たちはそれを解き明かせるかもしれないんだ！」
イシェはため息をついた。ラーンの楽観的な性格は、彼の魅力でもあったが、時にイシェを絶望させることもあった。
その時、扉が開き、テルヘルが入ってきた。「準備はいいか？今日は大規模な遺跡探検だ」彼女の言葉に、ラーンは目を輝かせた。
「よし！イシェもやる気出してろよ！」
テルヘルはテーブルの上に地図を広げた。「今日の目標は、ヴォルダン国境付近にある廃墟だ。そこには、かつての執権が所有していたという伝説の宝が眠っていると噂されている」
ラーンの目は輝きを増した。「伝説の宝か！ついに大穴が見つかるかも！」
イシェは地図をじっと見つめた。ヴォルダンとの国境付近であることは、彼にとってあまり好ましくなかった。しかし、テルヘルの目的を知れば知るほど、この遺跡探検が単なる冒険ではないことを悟った。
テルヘルは静かに言った。「ヴォルダンには、俺たちにとって邪魔な存在がいる。その存在を排除するために、この宝が必要だ」
ラーンの表情が曇る。「テルヘル、お前は何を考えているんだ？」
イシェはラーンの言葉を遮り、テルヘルに向かった。「なぜ、我々を使うんだ？ヴォルダンとの関係は危険すぎるぞ」
テルヘルの目は冷たくなった。「お前たちの力は必要だ。そして、お前たちは俺たちと同じ敵を持つのだ」
イシェは彼女の言葉に納得するしかなかった。彼らには、それぞれの理由でこの冒険に参加せざるを得ない状況だった。