冷たい風が遺跡の入り口を吹き抜ける。ラーンは肩をすくめ、イシェに「今日は寒いな」と呟いた。イシェは薄暗い顔で「早く終わらせて帰りたい」と返した。彼らはテルヘルに雇われて、ここ数日、この遺跡を探査している。
テルヘルはいつも通り無口だが、彼女の瞳には燃えるような光が宿っていた。ヴォルダンとの復讐を果たすために、彼女はあらゆる手段を尽くす決意だった。遺跡から得られる情報は、その復讐の糸口となるかもしれない。
ラーンの探検は、いつもイシェの計画性とは対照的だった。彼は危険な場所へ飛び込むが、その直感的な行動が彼らを窮地から救うこともあった。イシェはそんな彼のことを呆れながらも、どこか信頼していた。
今回の遺跡も、特に収穫がないまま日が暮れ始めた。「今日はもう終わりにしよう」とイシェが言うと、ラーンは少し不満げな顔をした。その時、テルヘルが突然立ち止まった。「何か感じる」と彼女はつぶやいた。彼女の目は、奥深く暗い通路を向いていた。
「何を感じるんだ?」ラーンの問いかけに、テルヘルは答えずに、ゆっくりと歩き始めた。イシェもラーンも、彼女の後を追うようにして進んだ。通路の奥には、薄暗い光がわずかに見えた。「何かあるぞ」ラーンの声が、静寂を破った。
彼らは慎重に進んでいくと、広くて高い天井を持つ大部屋に出た。部屋の中央には、巨大な石棺が置かれていた。石棺の上には、奇妙な文字が刻まれており、テルヘルの瞳は興奮で輝いていた。「ここだ」彼女は呟いた。「この遺跡の秘密はこの石棺にあるはずだ」。
ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。彼らは、この遺跡探査が単なる報酬を得るためのものではないことを悟った。テルヘルには、執念深い復讐心があったのだ。そして、その執念が彼らを巻き込んだ。石棺の蓋を開ける時、彼らの運命は大きく変わろうとしていた。