ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑う。「また大穴が見つかったぞ！今回はきっと！イシェも、テルヘルも言ってただろ？」
イシェはため息をつきながら、ラーンの肩を軽く叩いた。「ラーン、あの遺跡は既に何十年も探検されてきたんだよ。まだ何か見つかるなんて思わない方がいいわ」
「そうか？でも、俺の直感は違うんだ！」ラーンは自信満々に宣言した。彼の目は輝き、荒々しい笑顔が顔全体を包んでいた。
テルヘルは静かに酒を一口飲み干すと、「直感だけでは何も手に入らない。計画性と準備が必要だ」と冷静に言った。彼女の目は鋭く、まるでラーンの瞳の奥まで見透かしているようだった。
「準備？ああ、もちろん。イシェがしっかりやってくれるだろう」ラーンはそう言ってイシェにニヤリと笑いかけた。イシェは苦笑しながら頷いた。いつも通りの光景だ。ラーンの無計画さにイシェが振り回される、そしてテルヘルが冷静に状況を掌握する。
3人は遺跡探検の依頼を受けて、ビレーから離れた山奥へと向かった。険しい登山道と、崩れかけた石造りの遺跡群が彼らを待っていた。
「ここだ！」ラーンの声が響き渡り、彼は興奮気味に巨大な石門の前で立ち止まった。イシェは慎重に周囲を確認しながら、石門の表面にある複雑な模様を指さした。「これは…古代ヴォルダン文明の文字だ。危険な罠かもしれない」
「大丈夫！俺が先導する！」ラーンは言わずと知れた軽率さで石門を開けようとしたが、テルヘルが彼の腕を掴んだ。
「待て。」テルヘルの目は冷たかった。「この遺跡の秘密を解き明かすには、慎重な計画が必要だ。我々の目的は富を得ることではなく、ヴォルダンに隠された真実を明らかにすることだ」
ラーンの顔色が変わった。彼はテルヘルとの約束、そして自分たちの存在意義について改めて考えさせられた。イシェも沈黙で、テルヘルの言葉を聞いていた。3人の間に、今まで以上に深い均衡が生まれていた。