ラーンが石ころを蹴飛ばすと、それはかすかな音を立てて、埃を巻き上げた。イシェは眉間に皺を寄せながら地図を広げ、指で遺跡の入り口を示した。「ここだ。ここには大穴があるって聞いたことがある。」
「またかよ。」ラーンはため息をつきながらも、剣を手に取った。「だがな、イシェ。もし本当に大穴が見つかったら、俺たちは英雄になれるんだぞ!」
イシェは苦笑しながら頷き、テルヘルに視線を向けた。「準備はいいですか?」
テルヘルは冷静に頷き、小さな宝石を握りしめた。「もちろん。必要なものは全て揃っている。」彼女の目は氷のように冷たかった。ヴォルダンへの復讐、そのために彼女はあらゆる手段を使う覚悟だった。
遺跡の入り口は、崩れかけた石造りの門で塞がれていた。ラーンが力任せに門を押し開けると、内部は薄暗く、不気味な静けさに包まれていた。
「なんか…変だな。」イシェは耳を澄ませた。「何か聞こえる…」
その時、地面が激しく振動し始めた。遠くから、まるで巨人が歩くような重々しい地響きが響き渡った。ラーンの顔色が変わった。「おい、これは…!」
壁にひびが入るように揺れる中、イシェは恐怖で言葉を失った。テルヘルは宝石を握りしめ、鋭い目で周囲を見回した。何かが迫っている。そして、それは彼らにとって脅威となる存在であることは間違いない。