ビレーの朝は冷たかった。ラーンが目を覚ますと、イシェがすでに準備をしていた。「今日はテルヘルが指定した遺跡だ。地図を確認する必要がある」とイシェは言った。ラーンの顔色が変わった。「またあの遺跡か?あの場所、何か嫌な予感がするんだ」
「嫌な予感?そんなの気にしないよ!きっと大穴が見つかるぞ!」ラーンはそう言ったが、彼の声にはいつもの自信がなかった。テルヘルに雇われてから、彼らは様々な遺跡を探索してきたが、どれも大きな発見には至らなかった。むしろ、危険な目に遭うことが多くなっていた。
テルヘルはいつも冷静で、目的のためなら手段を選ばない。彼女からもらう報酬は高かったが、その裏側には何か暗い秘密があるような気がしていた。「一体何を目論んでいるんだ…」ラーンの心の中に不安の影が忍び寄る。
遺跡へ向かう道中、イシェが突然立ち止まった。「ここだ、この場所…何か感じる」彼女は眉間に皺を寄せた。「まるで…地獄のような重圧を感じるのよ」ラーンも不気味な静けさに包まれた空気を肌で感じた。
遺跡の入り口には、奇妙な紋章が刻まれていた。イシェは「これは…ヴォルダン王国の紋章ではないか!」と驚きの声を上げた。ラーンの心臓が激しく鼓動した。テルヘルがヴォルダンに復讐を誓う理由は何か?
遺跡内部へ足を踏み入れると、そこは異様な雰囲気に包まれていた。壁には不気味な絵画が描かれており、床には腐敗した骨が散らばっていた。「ここは…まるで地獄のようだな…」ラーンは呟いた。イシェも恐怖で言葉を失っていた。
彼らは遺跡の奥へと進んでいくにつれ、より深く、より暗い場所に迷い込んでいった。そしてついに、彼らは巨大な扉にたどり着く。扉には、かつて見たことのない恐ろしい怪物が描かれていた。その目は生きているように光り輝き、ラーンの魂に恐怖を植え付けた。
「これは…一体何なんだ…」イシェの声は震えていた。「ここには何か邪悪な力が潜んでいる…私たちはここに来るべきではなかった」
扉を開けるか否か。ラーンは苦悩した。彼が決断を下す前に、背後から冷たい声が聞こえた。「ついに来たか…この地獄の門を開く時が」テルヘルが微笑んでいた。彼女の目は狂気に満ちていた。