「よし、今日はあの廃墟の奥まで行ってみよう。」ラーンが地図を広げると、イシェは眉をひそめた。「またあの迷宮？ ラーン、前回も言っただろう、あの辺りには危険な魔物が住んでるって噂があるんだよ。地図にも記されてない場所だし、行くべきじゃない。」
「大丈夫だよ、イシェ。今回はテルヘルが一緒だぞ。彼女に頼めば安全だ。」ラーンは自信満々に笑った。テルヘルは地図をじっと見つめ、鋭い眼光で周囲を警戒していた。「確かに危険な場所だが、その奥には貴重な遺物がある可能性がある。リスクを承知の上で進む必要がある。」
イシェはため息をついた。「いつも通り、ラーンの計画は不明瞭だ。でも、テルヘルが言うなら…」彼女は地図を広げ、複雑に交差する街道と記号を丁寧に確認した。「よし、安全なルートを確保しよう。」
廃墟の入り口には、崩れかけた石造りの門が朽ち果てていた。かつて栄華を誇った都市の面影は、今や苔むした壁と崩落した柱だけが残っていた。ラーンは剣を構え、「さあ、行こう！」と叫び、真っ先に廃墟内部へ足を踏み入れた。イシェはテルヘルに視線を向けると、渋々ながら彼の後を追った。
地図に従い進むにつれ、空気が重くなり、不気味な静寂が支配するようになった。壁には奇妙な文字が刻まれており、イシェは背筋が寒くなるのを感じた。「ここは本当に安全なのか…」彼女は不安げに呟いた。テルヘルは深く頷き、「慎重に進もう。」と冷静に指示した。
迷宮のような通路を抜けると、広大な地下空間が現れた。そこには、巨大な石柱が幾つものアーチを形成し、中央には祭壇のような構造物がそびえ立っていた。ラーンの目は輝き、「ついに来たぞ！ 大穴だ！」と叫んだ。イシェは地図を広げて確認する。「ここは地図に記されてない…一体何？」
テルヘルは祭壇に刻まれた紋章をじっと見つめ、眉間にしわを寄せた。「これは…ヴォルダンのシンボルだ。」彼女は静かに呟いた。ラーンとイシェは驚き、顔を見合わせた。
「ヴォルダン？ なんでこんな場所に…」ラーンの言葉は途絶えた。テルヘルは地図を握りしめ、「ここには何か隠されているはずだ。」とつぶやいた。彼女の目は燃えるような闘志で輝いていた。