ビレーの朝は薄暗い空の下で始まった。ラーンはいつも通り、イシェを起こすために彼女の寝顔を見下ろしていた。「起きろ、眠り姫。今日は大穴が見つかる予感がするんだ!」
イシェは目を擦りながら、彼を睨んだ。「また夢を見たのか? そんな楽観的なこと言っていても、結局は日暮らしだぞ」
ラーンの笑顔は消えなかった。「そうかもしれないけど、いつか必ず掘り当てられるさ。ほら、今日はテルヘルさんが高い報酬を約束してくれただろ?」
イシェはため息をついた。テルヘルは謎が多い女性で、いつも冷めた表情をしている。ヴォルダンへの復讐を果たすために遺跡を探しているらしいが、その目的には何か別のものがあるように感じられた。
今日も彼らは、ビレーから少し離れた場所に位置する遺跡へと向かった。遺跡の入り口は崩れかけており、内部は暗闇に包まれていた。ラーンの持つランプの光だけが、石畳の上をゆっくりと照らしていく。
「ここは以前にも探索したことがあるはずだ…」イシェは足元に落ちた瓦礫を蹴り飛ばしながら言った。「あの時、天井が崩落して едваに逃げられた場所だった」
ラーンは笑いながら、「そんなこと覚えてるのか? 僕は何も覚えてないよ! さあ、行こう!」と、イシェの手を引いて奥へと進んでいった。
しかし、その時、不気味な音が響き渡った。それはまるで石が砕けるような音で、彼らの背後から聞こえてきた。ラーンは振り返ると、崩れかけた天井から、大量の石が落下してくるのを目撃した。
「逃げろ!」
ラーンの叫び声と共に、彼らは必死に逃げ出した。しかし、すでに遅かった。石の雨は容赦なく彼らを襲い、イシェはバランスを崩し転倒した。ラーンは彼女を抱き上げようとしたが、その瞬間、天井から巨大な岩が落下してきた。
「イシェ!」
ラーンの叫び声が、遺跡内に響き渡る。岩の圧壊は凄まじく、周囲の石も巻き込みながら、彼らを飲み込んでいく。