ビレーの薄暗い酒場の一角で、ラーンが豪快に笑い声を上げていた。「あの遺跡、奥深くまで入ったぞ!まるで迷宮みたいだった!」 彼の目の前で、イシェは眉間に皺を寄せていた。「迷宮?そんな危険な場所に行く必要があったのかしら。あの石碑の断片だけで十分じゃないの?」
ラーンの豪快な笑いは、イシェの冷静な言葉で少しだけ沈んだ。だが、すぐに彼は立ち上がり、テーブルを叩いた。「いや、イシェ、お前はわかってない!あの遺跡には何かがあるって感じるんだ!俺たちにはまだ大穴が見つからないだけで、いつか必ず掘り当てられる!」
イシェはため息をついた。「ラーン、いつまでも夢を見るだけじゃ何も始まらないわよ。現実を見てなさい」
その瞬間、テーブルの影から、テルヘルが鋭い視線で二人を見据えていた。「大穴か…興味深い話だ。では、私がその『大穴』を掘り当てる手伝いをさせてくれないか?」
ラーンは目を輝かせた。「おお!テルヘルさん、あんたならきっと何か知っているはずだ!」
イシェは不安そうにテルヘルを見た。「一体何を知っているの?あなたの目的は何なの?」
テルヘルは微笑んだが、その笑顔にはどこか冷たい光が宿っていた。「私の目的は…ヴォルダンへの復讐です。そして、そのために必要なもの、それがこの遺跡にあるのです」
彼女の言葉に、ラーンとイシェは息を呑んだ。圧力のようなものが、二人を包み始めた。テルヘルの目的、そして彼女が隠している真実。それは、彼らを巻き込んだ危険な渦の始まりだった。