ラーンが力強く岩盤を砕くと、イシェは眉間に皺を寄せて周囲を見回した。「ここじゃない…また違う場所か?」
「いや、ここだ!あの刻印があった場所だろ!」ラーンは自信満々に言ったが、イシェの目は疑いの色を帯びていた。
「刻印?お前、あれはただのひび割れだって言ってなかったか?」
「えっと…」ラーンの顔色が少し曇った。「まあ、でも今回は違う!絶対ここに何かあるって気がするんだ!」
テルヘルは冷めた視線で二人を見据えていた。「時間を無駄にするな。もしもまた的外れなら、報酬は減額だ。」
ラーンの肩が落ち込む。イシェはため息をつきながら、壁に沿って慎重に手を走らせた。すると、石の奥深くで何か光るものが見つかった。
「あれ…何かあるかも!」
イシェが興奮気味に叫ぶと、ラーンもすぐに駆け寄ってきた。テルヘルは眉を少し上げて興味を示した。
だが、その光り輝くものは、ただの水晶だった。イシェの肩を落とした様子を見たラーンは、無邪気な笑顔を見せた。
「まあ、いいさ!次はきっと大穴が見つかるぞ!」
しかし、イシェは彼をじっと見つめ、何か言いかけて言葉を飲み込んだ。
夜が更け、焚き火の周りで食事をする三人の影が揺れる。
「あの…」イシェは少しだけ声を絞り出した。「テルヘルさん、なぜ私たちはこんな危険な遺跡を探しているのですか?」
テルヘルは視線を火に落とす。「私の目的は、ヴォルダンを滅ぼすことだ。そのためには、強力な武器が必要なのだ。」
「武器…?」ラーンは首を傾げた。イシェは静かに言葉を紡いだ。「つまり、この遺跡で何かを見つけることで、ヴォルダンと戦う力になるのか?」
テルヘルはゆっくりと頷いた。「そう。そして、その力を手に入れるために、お前たちが必要なのだ。」
イシェの心には不安が広がった。困難な道のり。そして、その先に待っているものとは…。