「準備はいいか?」
ラーンの豪快な声とイシェの静かな頷きが、薄暗い洞窟の入り口に響いた。テルヘルは背後から二人を見下ろすように立っていた。彼女の鋭い視線は、まるで洞窟の奥底にある謎を透かそうとするかのようだった。
「今回は特に注意が必要だ」
テルヘルの言葉にラーンは軽い scoff を漏らした。いつも通り危険な遺跡に挑むことに、彼は興奮さえ覚えた。イシェは、いつも通りの冷静さで地図を広げ、周囲の地形を確認する。
洞窟内部は、湿った土と石灰岩の臭いが充満していた。足元には苔むした石畳が続いており、時折、崩落した天井から埃が舞い降りてくる。ラーンの持つランタンの光が、壁に映る影を不気味に揺らしていた。
「ここだな」
テルヘルが立ち止まり、壁の一部分を指さした。そこに刻まれた複雑な模様は、まるで古代の言語のように見えた。
「遺跡の鍵になるはずだ」
彼女は小さな金槌を取り出し、慎重に模様を叩き始めた。すると、壁の一部がゆっくりと沈み込み、奥へと続く通路が現れた。ラーンの目は輝き、イシェは緊張した面持ちで周囲を警戒する。
「よし、行こう!」
ラーンの言葉に促されるように、三人は新たな通路を進んでいった。しかし、その先には予想外の光景が広がっていた。広大な地下空間には、幾つもの石柱が立ち並び、中央には巨大な祭壇が鎮座していた。そして、祭壇の周りを囲むように、何百体もの人骨が散らばっていた。
「これは…」
イシェは言葉を失い、ラーンもいつもの軽快な態度を崩した。テルヘルだけが、冷酷な表情で祭壇に近づいていく。
「ここには何かがあるはずだ」
彼女は祭壇の上にある、小さな水晶の球体に手を伸ばした。その瞬間、地面が激しく揺れ始めた。天井から石が崩れ落ち、三人は必死に身をかわす。
「逃げろ!」
ラーンの叫びが洞窟内に響き渡った。三人は力を合わせて、崩れ落ちる遺跡から脱出しようと奮闘する。その時、イシェはラーンの手を強く握りしめた。彼女の目には、今まで見たことのない強い決意が宿っていた。
「一緒に逃げよう」
彼女の言葉に、ラーンは力強く頷いた。そして、テルヘルも彼らの後ろを走り始めた。三人は互いに支え合い、団結することで、崩れゆく遺跡から生還することができた。