ビレーの朝は、いつもと同じように霧が立ち込めていた。ラーンはイシェを起こすために、戸を激しく叩いた。イシェは眠そうに顔を上げ、「また遺跡か？」と呟きながら起き上がった。
「今日は違うんだ！テルヘルから依頼があったんだぞ！あの遺跡、四方から見渡せる高台にあるやつだ！」
ラーンの言葉にイシェの目は少しだけ輝いた。あの遺跡は、ビレーの四方を見渡す高台にあり、その周辺には古代文明の謎が眠るという噂だった。
「報酬も高いらしいぞ！これでようやく新しい装備を買えるな！」
ラーンは興奮気味に剣を磨いていた。イシェは彼とは対照的に、冷静に準備を始めた。テルヘルが提示した報酬は確かに魅力的だったが、イシェは何か嫌な予感がしていた。
遺跡の入り口に着くと、テルヘルが待っていた。彼女はいつものように黒の装束を着ており、鋭い眼光で二人を見据えていた。
「今日は四方から魔物が湧いてくる可能性が高い。油断するな。」
テルヘルの言葉にラーンは少し不安げになったが、イシェは冷静に周囲を警戒した。遺跡の中は暗く、湿った空気が漂っていた。四方からの視界を遮るように壁が立ち並び、不気味な影が揺らめいていた。
すると突然、四方から同時に魔物が襲いかかってきた。ラーンは剣を振り下ろし、イシェは素早く動き回って攻撃をかわした。テルヘルも冷静に呪文を唱え、魔物たちを撃退していった。
激しい戦いの後、彼らはようやく遺跡の奥深くへと進んだ。そこには、四方から光を浴びて輝きを放つ巨大な石碑が立っていた。
「これは…！」
ラーンは目を丸くした。イシェもかつて見たことのない古代文明の文字が刻まれた石碑に驚いていた。テルヘルは石碑に手を触れ、何かを呟いた。
その時、石碑から四方に向かって光が放たれ、遺跡は激しく揺れ始めた。ラーンとイシェはバランスを失い、地面に倒れ込んだ。
「これは…！」
テルヘルの顔色が変わった。彼女は石碑の文字を解読していたのだ。そして、その内容に恐怖を感じていた。
四方から吹き荒れる風と共に、遺跡は崩れ始め、ラーンとイシェは必死に立ち上がり、逃げるように走り出した。